ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   偽りの恋 ⅧⅩⅨ 

「金ちゃん、何言ってんの?」  言葉の心意が理解できず、千恵の瞳が定まらない。 「然したることじゃない。綺麗になったね、と言う意味だよ」 「まあ、驚いた。もっとストレートに話してよ」  頬を膨らませ拗ねる。 「その顔も、素敵だ」  千恵が自分の顔を両手で隠した。 「もう、私の顔を見せない・・」 「いいよ、見せなくても。もう、十分に見たから・・。アッハハ・・」  二人は笑った。俺は笑いながら、噴水…

   偽りの恋 ⅧⅩⅧ 

 あの日から、二年が過ぎ去った。俺は研修期間が終了し、ブラジルの企業に面接。三ヶ月後の昨日、合格通知の手紙が届く。その場で、千恵に電話した。 「あっ、金ちゃん・・。どうしたの?」 「明日の午後に、会えるかな?」  しばらく、沈黙が続く。俺は不安になった。 「うん、いいよ。本当に、会えるんだね・・」  か細い声が聞こえてきた。 「そうだよ、待たせて悪かったね。ようやく、夢が叶った」 「ううん、悪く…

   偽りの恋 ⅧⅩⅦ 

 彼女の感情は、激しく変化する。言葉を選ばなくてはと思った。ただ、恣意なことは避けたい。 「う~ん、上辺だけの女性らしさでなく。なんと言えばいいのかな。麗しい? 簡単に言えば、仕草や姿が大人の女性として、たおやかな色っぽさかな?」  千恵は、直ぐに解釈したようだ。あっ、やっぱり。あの目つきは、小悪魔の目だ。勘違いしている。 「な~んだ。そうか、金ちゃんが喜ぶ体形になり、もっと女っぽくなればいいの…

   偽りの恋 ⅧⅩⅥ 

「うん、そうしよう。じゃ、しばらくは、お別れだ」 「えっ、本当に会えないの?」  ベンチから立ち上がり、俺を見下ろす。俺は座ったまま、見上げて頷く。 「どれほど、苦しめるつもりなの? これ以上苦しめるなら、私、死んじゃうから」  仕方なく、俺は立ち上がる。そして、抱きしめた。 「千恵ちゃん、永遠に別れることじゃないよ。しばらくの間だ・・」 「しばらくって、一週間、二週間?」 「いや、もっとかな」…

   偽りの恋 ⅧⅩⅤ 

「あいや~、間違えた。性欲じゃなく、快楽だった。だから、そんな気持で、恋を始めたら大変だ」  俺は支離滅裂な状況に陥った。千恵は面白そうに聞いている。 「だから、なんなの? うっふ・・、金ちゃんを困らせるって、楽しい。ふふ・・」 「うー、参った」  あの時の、千恵の姿を思い出してしまった。頭に焼き付いたイメージを、懸命に拭い去る。あ~、汗だくだ。 「金ちゃん、安心してよ。確かに、あの時は無我夢中…

   偽りの恋 ⅧⅩⅣ 

 俺は迷ったが、ストレートに喋る。 「千恵ちゃんも大人だ。だから、率直に言うね。佐藤さんの体当たりって、本当に体を投げ出すことじゃないよ」  千恵は感じたらしく、ポッと顔を赤らめた。 「君は・・、俺を信じて、自分をさらけ出した。辛い勇気だったろうね」 「・・・」  彼女はたじろぐことなく、身を縮め黙って聞く。 「俺だって、辛かった。少なからず、君に好意を持っていたから、悪い気分じゃなかったよ。で…

   偽りの恋 ⅧⅩⅢ 

 千恵と恋をするなら、きちんとスタート・ラインを発とう。彼女を悲しませてはいけない。俺はそう考えた。 「千恵ちゃん・・。さっきさぁ・・、約束のこと、俺は言ったよね」 「うん、でも・・。内容を言ってないよ」  恐らく、困惑するだろう。もしかしたら、嘆き、泣きわめくかも。 「しばらく、会わない。それが、約束だよ」  千恵の鋭い眼差しに、俺はたじろぐ。 「嫌いだから、じゃないよ。千恵ちゃんと、本当の恋…

   偽りの恋 ⅧⅩⅡ 

 もう、隠す必要はないと判断し、千恵にあの人のことを話す。 「その人は、素敵な人?」 「うん、素敵な人だった」  千恵の瞳が揺らいでいる。懸命に想像しているようだ。 「私と比べたら・・」 「比べることじゃないよ。人それぞれに個性がある。素敵の意味も異なるからね」 「ふ~ん。でも、金ちゃんが素敵に思った理由を教えて?」  あの人の素敵な理由? 言葉に表せない。心の感覚かな? 「ねえ、隠すこと無いじ…

   偽りの恋 ⅧⅩⅠ 

「まだ、学校が終わっていない。それに研修もあり、どこへ行けるか分からないんだ」  千恵は視線を外すことなく、俺の言葉を聞いている。 「だから、結婚なんて考えられない。千恵ちゃんも若いしね・・」 「9月で、19になるわ。待っていたら、おばさんになっちゃう」 「あはは・・、佐藤さんに聞かれたら、叱られるよ」 「そうか、うふふ・・」  俺は千恵の手を握り、再度ベンチに腰掛ける。 「それでね、時間が掛か…

   偽りの恋 ⅧⅩ 

 俺は驚き、目を見張る。 「そうなの。お祖母ちゃんから、いろんな国の話を聞かされたわ。だから、小さい頃からの夢だった」 「お祖母ちゃんが、何故?」  千恵の説明によると、祖母も外国の生活に憧れていたという。実際に、祖父と一緒にヨーロッパや北中米へ観光旅行した。 「だから、外国に住めたらいいねって、いつも話していたの」  俺の考えが、さらに前向きになった。 「じゃ、千恵ちゃんは外国に住むこと、問題…