ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物が、世界大会に参加する。笑い、涙、ロマンス、親子の絆の物語。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。心意を確かめるために、行方不明の彼を探す。そして、ハワイ島へ。
 忘れ水 幾星霜  偶然の出会いが必然なのか、憧れは恋へ。恋は愛へ。山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。ひょんな出会いからの交流。そして・・。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズの第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 雨宿りに続く大河内晋介シリーズの第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 怪奇な夢を見続ける主人公。夢に現れる和服姿の美しい女性。それは不思議な縁から始まるものであった。
 ア・ブルー・ティアズ 入院中の父子が生死の別れ際に触れ合う姿。その様子見た主人公が、自らの父に対する情念を考える。また、夜間の救急病院で起きる生と死のドラマ。

   謂れ無き存在 ⅡⅩⅠ 

「ふふ・・、あなたたちのお母さんは、私の友達なの。高校の同級生で、三年間とても仲良しだったわ」  笑顔だった表情が、愁いに変わり俺たちを見詰める。 「卒業後、しばらくの間は親しく連絡を取っていたけど・・。徐々に其々の道を歩み、連絡が取れなくなったの。風の便りで、元気に過ごしていることは知っていたわ。でも・・」  奥さんの言葉がとぎれ、エプロンで顔を覆った。肩が小刻みに震えている。 「続きは、私が…

   謂れ無き存在 ⅡⅩ 

 朝食を済ませ、早めに家を出た。今日の真美の運転は、昨日よりリッラクスしている。俺は落ち着いて座ることができた。講師の家まで、他愛ない会話をする。箕郷から下り、高崎市街地に戻る。国道17号に出て烏川沿いを走り、和田橋を渡って護国神社の近くにやって来た。  説明通りに左折する。直ぐに探すことができた。一際目立つ『運命を考える会』の看板が、家の前に建てられていたからである。 「あっ、これだ、この家だ…

   謂れ無き存在 ⅩⅨ 

 目覚めると、真美は既に起きていた。キッチンからカタコトと音が聞こえる。顔を覗かせると、直ぐに気付き笑顔で挨拶してきた。 「おはよう、朝食の支度ができたから、早く顔を洗ってね」 「やあ、おはよう・・」 「着替えを、ベッドの横に用意してあるわ」 「えっ、着替え?」  俺は、急いで顔を洗い、寝室へ行く。ベッドの脇に新しいネックのシャツとセーターが置かれていた。俺は信じられない気持ちで、手に取ってみる…

   謂れ無き存在 ⅩⅧ 

 確かに真美の意見は、正しいと思う。余計な詮索は必要ない。 「そうだね。俺は愛に飢えていた時期もあった。でも、大人になるにつれ、愛に不信感を抱き、求めないことにした。だって、いくら求めても、結果的に虚しくなるだけだ」 「私も虚しく悲しい時間を過ごしたわ。誰も傍に居なくて、幸せを感じなかった。とても寂しかった・・」  彼女を養育した人は約束を果たすだけで、家族の愛を教えなかった。だから、真美は愛の…

   謂れ無き存在 ⅩⅦ 

 秋の夜は冷える。真美に上掛け布団を掛け、俺も横になった。真美が甘えるように寄り添う。芳しい香りが俺の肺を満たす。 「明日、先生に何を聞くつもりだい?」 「うん、夢のこと・・。できれば、夢に現れる人が誰なのか、知りたいの」  間近で話す真美の息が、俺の顔に温かく触れる。果たして、俺の息は大丈夫だろうか。心配になった。俺は横を向いて、手のひらに息を吹きかけ確かめる。 「洸輝、何してるの?」 「うん…

   謂れ無き存在 ⅩⅥ 

 俺は彼女の手を取ると、諭すように話し始める。 「真美、いいかな?」 「な~にぃ? そんな怖い顔をして」 「真面目な話だから、最後まで聞いてね」 「・・・」 「セミナーから始まったふたりの出会い。あっという間に、親密な関係になってしまったね。事実、ゆっくりと考える時間さえ無く、戸惑いを感じ先々のことを心配している。本当に運命の仲であれば、しっかり話し合うべきだ。結婚と言う絆は、単純な結び付きでは…

   謂れ無き存在 ⅩⅤ 

《はい、はい、仕方ないか・・》 「はい、持って来たよ」  俺はできる限り目を逸らし、バス・タオルを渡す。浴室のガラス戸が開き、真美の腕が現れた。俺は咄嗟に目を瞑る。湯気に絡んで、爽やかなボディ・ソープの香りが漂った。 「ありがとう・・」 「いいや、べつに・・」  俺は居間へ引き返す際に、ガラス戸越しの白い影を見てしまった。それは、俺にとって衝撃的な影、居間に戻る足が覚束ない。ソファにドッサと倒れ…

   謂れ無き存在 ⅩⅣ 

「ううん、誰からも。ただ、何故か記憶に残ってるの」 「多分、お母さんが、子守唄で歌ってたかも知れないね」 「そうかもね・・」  真美が紅茶を運び、洒落たガラス張りのローテーブルに置く。そして、俺の横に座り、体をぴたりと寄せた。真美の熱い体温が俺の体に侵略を試みる。俺の軽い脳は、彼女の熱い息遣いに反応し独り喘ぐ。だが、心の奥は冷静な判断を強く求めていた。 《ただの煩悩で一線を越えることは、いとも簡…

   謂れ無き存在 ⅩⅢ 

「今、連絡してみたら、早い方がいいわよ」 「そうだね、電話してみるか」  携帯を取り出し、渡されたメモの番号に掛ける。 「もしもし・・」 「いつ電話してくるかと、待っていましたよ」  俺からの電話が、必ず掛かって来ると分かっていたようだ。 「あっ、はい・・」 「ところで、傍に居るのは真美さんでしょう?」 「えっ? ど、どうして・・」  講師が、俺たちのことを知っている。俺は驚いた。真美も俺の体に…

   謂れ無き存在 ⅩⅡ 

 真美は俺の顔を見詰めたまま、黙って聞いている。 《今までの俺は、負け犬なんだ。実際は強くない。空威張りしているだけさ・・》 「真美を撥ねつける勇気が無い。直ぐに受け入れたい。でも、でも・・。俺は君のことを、なんにも分かっちゃいない。歳だって知らないんだよ」  真美の瞳が輝くのを感じた。 「分かった。話すわ。私が十六歳になると。約束の養育を果たした友人夫妻は、念願の永住の地イスラエルへ移住しちゃ…