微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)ⅩⅧ
私が若月を庇うように、ファミレスを出る。やはり、私たちを見張っていた邪鬼が、ゴソゴソと動き出した。
「相当数の邪鬼が、暗闇で動いている。若月、注意しろ!」
私が、若月に小声で耳打ちする。
「はい、主任」
私たちは雑木林の反対方向へ歩く。明るい商店街の中を、ゆっくり歩いた。その隙に、御堂が雑木林へ向かう。
「よし、上手く行きそうだ」
三人が同時に後ろへ振り向いた。ヤツラには、商店街の明かりが眩しく、三人をまともに見られない。
「ウ~ッ、小賢しい人間どもめ・・」
真っ赤な目と鋭い牙で、憎々しく見つめる。地面を長い爪で引っ掻く。
「いつ見ても、不細工な姿だ。風上にいるから、あの嫌な臭いを嗅がなくて助かる」
若月が顔をしかめながら、呟いた。
「オノレ~、若いの。減らず口を叩きやがって、必ず食い殺すぞ~」
権助が前に現れ、若月を睨む。
「な、なんだって! ちゃんちゃらおかしいや・・、フンだ」
彼は一瞬怯むが、鼻であしらう。
「ガァ~ッ!」
権助の指示で、数頭の邪鬼が襲いかかる。
「カンジザイボサツ ギョウジン ハンニャハラ ミッタジ・・」
若月の般若心経に、邪鬼らが立ち止まり逃げ腰になった。
「おい、いつの間に読経が・・」
「あれから、必死に覚えましたから・・」
私も一緒に唱える。邪鬼らは暗闇の中に逃げ込む。
「だが、油断は禁物だ。必ず隙を窺っているからな」
「御堂さんは、無事に行けたですかね?」
福沢が心配する。