2018年1月のブログ記事
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「今日は、夕飯までいなさい。洸輝君は、主人と仕事の話があるでしょうから・・。真美は私の手伝いをしてね?」 「もちろん、喜んでするわ。料理をたくさん教えてね、お母さん?」 ふたりは腕を絡ませ、楽しい雰囲気でキッチンへ行く。俺だって、甘えたい気分だった。 《自分の性格に、もどかしく情けない思いだ。屈... 続きをみる
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「子供を嫌う母親なんていないはず。あなたの幸せを考え、已む無い気持ちで施設へ預けたと思うわ。私が知るあなたのお母さんは、洸輝君と同じに心が優しかった」 《俺は信じない。絶対に信じない。二十五年間も音沙汰が無いじゃないか。たった一度も顔を見せていない。どんなに苦しい生活をしていようが、嫌いでなければ... 続きをみる
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「真美、これは俺だけの問題じゃない。俺と一緒にやろう」 彼女は俺の気持ちを理解する。ふたりで他のロウソクを灯す。新しい家族四人は、灯されたロウソクを見詰めた。 「さあ、みんなで一緒に消してから、ケーキ―を食べましょう」 真美が音頭を取って、一斉に息を吹きかける。消えたロウソクから、四本の煙が立... 続きをみる
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「それで、いつからお店に来れるかな?」 「明日の朝、バイト先に辞める連絡をして、早めに行けると思いますが」 「そう、分かった。仕事の内容や給料などの話は、その時にするね」 「はい、宜しくお願いします」 座ったまま頭を下げた。本当に働けるんだと思うと、喜びに心が揺れる。 「良かったね、洸輝。しっか... 続きをみる
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「さて、洸輝君の率直な意見を聞こう。どうかな?」 俺の心は彷徨っている。家族の絆が意図する意味を、漠然と理解するも不自然さを感じた。 《家族なんて、なんだ。絆の結び目が解ければ、簡単にバラバラだ。二十数年間、誰も手を差し伸べない》 「ん? 俺には、自分の存在自体が理解できないんだ。何を目的に生ま... 続きをみる
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突然に箸を置いた真美が、奥さんの顔を直視する。 「私たちを子供にして・・、お願い」 真美の言葉に、三人の箸が止まる。 「さっき、料理の手伝いをしながら、これが親子なんだろうなぁ、と思ったわ。楽しく幸せな雰囲気に憧れを感じたの」 俺の脳は、真美の言葉に揺さぶられた。 「ええ、私は構わない。あな... 続きをみる
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俺にとって、家族の絆はゼロだ。求めることもできない。親の顔や性格も知らない。もし、知る機会があっても、俺は断るつもりだ。今更知って、なんの意味も無い。ただ、混迷するだけで、なんの得にもならない。 「先生、家族の絆が運命であれば、絆の無い俺の運命は、どの様に考えればいいのですか?」 「いや、良く考... 続きをみる
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「私と洸輝の運命は、どうなの? 約束があったから、ママが夢に現れたのでは・・」 真美は夢に現れた母親が、あの講義に参加を勧めたと思っている。 《俺は、自分の過去を知り、自暴自棄に陥っている。このまま生きても、碌な人生が有る訳ない。道に迷い、左右どちらを選んでも結果は同じだ。悪いに決まっているよ》... 続きをみる
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「ふふ・・、あなたたちのお母さんは、私の友達なの。高校の同級生で、三年間とても仲良しだったわ」 笑顔だった表情が、愁いに変わり俺たちを見詰める。 「卒業後、しばらくの間は親しく連絡を取っていたけど・・。徐々に其々の道を歩み、連絡が取れなくなったの。風の便りで、元気に過ごしていることは知っていたわ... 続きをみる
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