ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   湖畔  (大河内晋介シリーズ第五弾)Ⅶ 

 私たちが東都大学の研究室へ行くと、全員が揃って待っていた。テーブルにはピザが用意されて、到着と同時に食べ始める。賑やかな食事会となった。兄貴分の若月を中心に、話が盛り上がる。私は福沢准教授と、その様子を眺めていた。
「ところで、大河内さん。あの件はどうでしたか?」
 福沢が心配顔で聞く。私は直ぐに察し、にこやかに答えた。
「先生が、是非会いたいと伝えたら、喜んでいました」
「本当ですか? あぁ、良かった」
 満面に笑顔を表し、大喜び。その表情に、私は困惑する。しかし、率直に伝えるべきだろうと思った。
「先生、彼女は肝心な事を言っていました。冥府の人が現世の人間と心を通わせたら、互いに不幸な結果になる。だから、怖いとも言っていましたよ」
「そうですか・・」
 福沢は大きく溜め息を吐く。
「私も同じ思いでした。苦しいけど諦めるしかないですね」
「えっ、大河内さんも同じ気持ち、だったのですか・・」
 二人の雰囲気が暗いと感じた若月が、心配して声を掛けた。
「そこのお二人さん、なんて暗い表情なんですか? パッと明るく行きましょうよ」
「そうだな、元気に行こう!」
 福沢が、大きな声で反応する。
「みんな、ちょっと聞いて欲しい!」
 全員が私の方に顔を向け、言葉を待つ。
「昨日、御堂さんに会った。北軽井沢の怪奇現象の話をしたところ、彼女は既に知っていた」
「本当ですか、凄いことだ」
 リーダーの畠山が、目を輝かせる。助手たちも互いに顔を見合わせた。
「それで、道祖神を通じて、情報を集めているそうだ」
 私は、ついでに道祖神の詳しい話を説明する。私の言葉に聞き入り、全員が幾度も頷いて見せた。

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