湖畔 (大河内晋介シリーズ第五弾)Ⅶ
私たちが東都大学の研究室へ行くと、全員が揃って待っていた。テーブルにはピザが用意されて、到着と同時に食べ始める。賑やかな食事会となった。兄貴分の若月を中心に、話が盛り上がる。私は福沢准教授と、その様子を眺めていた。
「ところで、大河内さん。あの件はどうでしたか?」
福沢が心配顔で聞く。私は直ぐに察し、にこやかに答えた。
「先生が、是非会いたいと伝えたら、喜んでいました」
「本当ですか? あぁ、良かった」
満面に笑顔を表し、大喜び。その表情に、私は困惑する。しかし、率直に伝えるべきだろうと思った。
「先生、彼女は肝心な事を言っていました。冥府の人が現世の人間と心を通わせたら、互いに不幸な結果になる。だから、怖いとも言っていましたよ」
「そうですか・・」
福沢は大きく溜め息を吐く。
「私も同じ思いでした。苦しいけど諦めるしかないですね」
「えっ、大河内さんも同じ気持ち、だったのですか・・」
二人の雰囲気が暗いと感じた若月が、心配して声を掛けた。
「そこのお二人さん、なんて暗い表情なんですか? パッと明るく行きましょうよ」
「そうだな、元気に行こう!」
福沢が、大きな声で反応する。
「みんな、ちょっと聞いて欲しい!」
全員が私の方に顔を向け、言葉を待つ。
「昨日、御堂さんに会った。北軽井沢の怪奇現象の話をしたところ、彼女は既に知っていた」
「本当ですか、凄いことだ」
リーダーの畠山が、目を輝かせる。助手たちも互いに顔を見合わせた。
「それで、道祖神を通じて、情報を集めているそうだ」
私は、ついでに道祖神の詳しい話を説明する。私の言葉に聞き入り、全員が幾度も頷いて見せた。