ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

 微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)Ⅸ 

 昼時間になっていたので、近くのラーメン店に餃子セットを三人分頼んだ。都合よく、福沢准教授が到着した。 「先生、昼は?」 「いや、まだ食べていません」  先に頼んだことを伝えると、福沢が満面の笑顔。若月を紹介し、お茶を用意してると出前の餃子セットが届いた。 「さあ、食べながら考えましょうか・・」  すき腹の若月が、勢いよく食べ始める。私は、食べながら話題を口にした。 「今回は、やや面倒だと思いま…

 微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)Ⅷ

 彼の姿に、助ける手段を講じるべきだと思案する。 「君は、香木の匂い袋を持っているのか?」 「いいえ、もう関係ないと思い、持っていません」  私が思わずため息を吐いたので、若月は察したらしい。 「持っていた方が、良かったのですか?」 「ああ、取り敢えず用心のために、常に持ち歩くべきだ」  彼はブツブツと呟く。 「どうした、一つも持っていないのか?」 「ええ、会社の女の子に見せたら、みんなが欲しが…

 微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)Ⅶ

「でも、後で不味いと思い、直ぐに引き返したけど・・」  若月は浮かない顔をする。 「それで、どうしたんだ」 「ええ、女の子の姿は消えていた。ただ、座席がそのまま濡れていました」  妙にうさん臭い感じがする。 「何か、他に感じたことは無いか?」  彼は困惑しているようだ。 「ん~、どうなんだろう。よく分かんないですが、嫌な臭いがした」 「えっ、どんな臭いだった?」 「はい、邪鬼の臭いです。それも、…

 微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)Ⅵ

 日曜日の朝、早くに目覚め、落ち着かない。今度は、どんな問題が待ち受けているのか、それに誰と出会うのか楽しみだった。  ただ、以前の出会いは、美しい女性だった。ところが、あのラジオから聞こえたのは、子供の声である。そのことが、特に私の興味をそそった。  若月を待つ間、心をときめかせ頭をフル回転させる。 《待てよ、今回はオレではなく、若月が主だな。車の購入経緯からしても、彼に係わることだ。用心させ…

 微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)Ⅴ

 その声は、雑音に抗い必死に呼びかける。 「助けて~、私を、ザザー、ガガッ・・助けて、ザザーッ、お願い」  私は声を振り絞って、応えた。 「分かった。ただ、内容を詳しく説明してくれ」 「うん、ガガッ、ガガ~、でも、後で・・」  消えてしまった。 「若月、この車を買った販売店は、どこだ?」 「あ~、これはネットで探しました。奇妙なことに、販売店は分かりません。指定された口座に、金額を支払うと・・」…

 微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)Ⅳ

「おい、待てよ。その高架橋へ行ってみよう」 「えっ、反対方向ですよ」 「構わん、そこへ案内してくれ」  若月は、渋々従う。一旦、首都高速を降りる。迂回してから再び首都高速を走った。 「そういえば、引っ越したんだっけ・・」 「でも、近い内に、主任の家の方へ越そうと考えています」 「どうして?」 「いや、なんとなく。近ければ、あの世界が・・」  その瞬間、オフのラジオから雑音が流れる。私は耳を疑う。…

 微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)Ⅲ

 しばらく何も起きなかった私は、がぜん興味が湧く。昼食が終わり、社に戻る。 「若月、帰りに家まで送ってくれるか?」 「いいですよ。帰りに呼んでください」  実際の状況を、私は確かめたいと思った。仕事が捗り、定刻で退社する。若月も支度して、私を待っていた。  ビルを出ると、雨は止んでいなかった。仕方なく駐車場まで走る。彼の車は、駐車専用ビルの五階に停めてあった。 「なんだ、車を替えたのか?」 「は…

 微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)Ⅱ 

 私は仕事しながらも、若月のことが気になる。  昼前に、若月がやって来た。 「ちょっと、待っていろよ。直ぐ終わるから・・」 「あっ、ハイ」  一旦、仕事を切り上げ、廊下で待つ若月に声を掛けた。 「さて、昼飯に行くか? 今日は少し肌寒いから、ちゃんぽんでも食べよう・・」  傘を差し、近くの店へ行く。幸いに混雑しておらず、待つことなく座れた。 「それで、どんな声だった?」 「ええ、子供の声でした」 …

 微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)Ⅰ 

 最近は温暖化の所為か、極暑が続く。今年は、梅雨時期が極めて少なかった。長雨は嫌だが、情感を味わう淑やかに降る小雨、身勝手ながら恋しく思う。  そんな私の想いを応えるかのように、朝から雨が降り始めた。現実に降ると、気分が優れない。特に出勤時は、足元まで濡れて仕事に差し障る。出社すると靴を脱ぎ、用意した靴下に履き替えた。 「大河内主任、おはようございます」  相変わらず、元気な声で挨拶する若月。 …

   偽りの恋 ⅨⅩ 

 紅茶を飲み、俺はショートケーキ、彼女はチーズケーキを食べた。 「それで、これからどうするの?」  千恵が不安そうに聞く。 「うん、俺は兄貴に結婚のことを伝えた。だから、弥彦のお祖母さんに会って、報告したい。どうかな?」 「ええ、もちろんよ。早く行きたい」  ただ、向こうでの生活に不安が残る。先に俺だけ行き、後から彼女を呼び寄せるつもりだ。恐らく、嫌がり一緒に行くと言い張るだろう。 「金ちゃん、…