ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

 微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)ⅡⅩⅧ 

 千代と御堂が別れの挨拶をした。 「若月さん、これであなたも平穏に暮らせるでしょう」 「はい、ありがとうございます」  若月は丁寧に礼を言った。 「それで、この若者たちの記憶を消しますが、宜しいですね?」  御堂が、私と福沢に念を押す。 「その件ですが、今後の活動を継続させるために、許される範囲で残せませんでしょうか?」  福沢准教授が、御堂に請願する。 「はい、わたくしの一存では、決め兼ねます…

 微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)ⅡⅩⅦ 

 守護や防人たちが洞窟観音を出ると、邪鬼たちが林の方へ逃げ始めた。駐車場の周囲が戦場となる。罵声と呻き声が錯綜。半時ほどで、邪鬼の屍が山積みになった。 「こちらへ・・」  徳明園の門まで許され、私たちは駐車場の周辺を見渡す。その光景は、目を覆うほどの荒ぶ世界であった。 「今から、あの屍を始末します」  一瞬、空が紫色に包まれ、駐車場に闇の穴が開く。 「あれは、・・・」  私の質問に、御堂が答えた…

 微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)ⅡⅩⅥ 

 二人の美しさに、助手たちが危険な現状を忘れ、見惚れてしまった。 「あらあら、しっかりしてちょうだい。危険が迫っているわ」  御堂が、たしなめる。 「そうだよ、これからが本番だ。気を引き締めていかないと・・」  若月も声を掛ける。 「それで、この後は何をすれば良いのですか?」  私が、千代に尋ねた。 「今から、守護や防人たちが、出てまいります。ただし、決して話し掛けないで下さい」 「え、何故です…

 微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)ⅡⅩⅤ 

 数え切れない邪鬼の大群。権助に新たな力が備わったようだ。私は恐れ、今回の戦いで権助を完全に潰さねばと思った。  庭園の池を過ぎる。ようやく、洞窟の入り口に辿り着いた。 「大河内さん、権助は内臓に目もくれず、真っ直ぐに向かってきましたよ」 「ええ、私も見ました。彼の執念を、改めて確認しましたね」 「うわぁ~」 「きゃあ~」  洞窟の中へ入る寸前に、助手の叫び声が上がる。 「どうした?」  後ろに…

 微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)ⅡⅩⅣ

 邪鬼の姿が見える私と若月が、揺れる木々の周辺を凝視する。 「やはり、隠れているな。ただ、権助の姿が無い」 「いえ、あの大木の後ろにいますよ。主任・・」 「そうか、指で示すなよ。ヤツは、こっちが気付いていないと思っているようだ」  残念なことに、渡瀬と明菜が若月の言葉を聞いて、大木の方を眺め助手たちに知らせてしまった。彼らは、方向を指しながら騒いだ。 「ダメだ。見るんじゃない! 早く中に入れ!」…

 微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)ⅡⅩⅢ 

 関越高速道の高崎インターを下り、市内へ向かう。環状線から、国道17号の烏川沿いを走る。聖石橋を渡り、目の前の観音山を目指した。 「さあ、直ぐ近くだ。心構えはいいかな」  福沢が、助手たちに告げた。彼らは前方に目を向け、ただ頷く。車内が緊張感に包まれる。 「そ、そんなにぃ、固くなったら~、素早く、う、動けないよ。リラックス、リラックス・・」  上っ調子の声で、若月が緊張を和らげようとした。 「ふ…

 微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)ⅡⅩⅡ 

 その時、若月の携帯が鳴った。 「あ、夏帆さん。うん、家には行かないで欲しい。ちょっと待ってね」  様子を聞いていた私に代わる。 「大河内だけど、若月の話は本当だ。君に危険が及ぶ、だから絶対に近寄らないで・・」  彼女は半信半疑だが、ようやく納得してくれた。その後、若月はブツブツと話し続ける。 「さあ、出発しよう。詳しいことは、車の中で説明する」  助手の五人は不安そうな面持ちで、私と福沢の説明…

 微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)ⅡⅩⅠ 

 私と福沢が、非常に危険な戦いとなるので、参加を止めるよう助手たちに説明した。 「いいえ、僕たちも行きます。先生のお役に立ち、僕たちの経験にもなる」  リーダーの畠山が、代表で答える。他のメンバーも頷く。 「でも、女の子は危ない。ヤツらは、弱い人間から襲う」 「あら、私が弱い人間と思っているの? 冗談じゃないわ」  若月の言葉に、二人の女子が頬を膨らませ、彼を睨め付ける。 「いや、それだけじゃな…

 微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)ⅡⅩ 

 案の定、権助は血眼になって、私たちを探していた。御堂の行方も気にしている。御堂が雑木林で姿を消したことも、仲間から情報を得た。数匹の邪鬼を雑木林へ行かせ、状況を窺っている。  翌日の朝、私と若月は会社に連絡して、有休を得る。電話には、若月と交際を始めた女子事務員が応対。彼が言葉巧みに、彼女に伝えた。 「分かったわ。課長に説明します。でも、体が心配よ。帰りに、あなたの家へ行くわ」 「いや、いいよ…

 微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)ⅩⅨ 

 御堂は雑木林に逃げ込み、道祖神の穴へ入ることができた。 「さて、これからどうするか。私の家は無理だ。恐らく、ヤツらに囲まれているはずだ」 「これから、タクシーで大学へ行きましょう」  私は、福沢の提案を直感で受け入れる。大学の研究室は、邪鬼の嫌う工夫をしていたからだ。 「先生、研究室はあのままですか?」 「ええ、もう少し改良をしました。邪鬼は近寄れないでしょう」 「えっ、どんな部屋ですか?」 …