微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)ⅩⅥ
食後、それぞれの課題を持って別れた。別れ際に、挑発だけは受けるなと、若月に忠告をする。家に帰ってからも、心配した。シャワーを浴びてから、電話を掛ける。
「はい、若月ですが・・」
「ああ、私だけど。問題無いか?」
「特に、今のところは何もありません」
しばらくして、福沢から電話を受ける。
「やはり、私も狙われているようですね」
「えっ、そんな兆候がありましたか?」
「はい、家の書棚が荒らされていました。妻は実家に帰っていますので、助かりましたよ」
ヤツらは、相当に焦っているようだ。
「そうですか、それで対策は・・」
「はい、洞窟観音で購入したご朱印の札を、家の窓やドアに貼りました。それに、匂い袋を肌身離さずに持つようにします」
「とにかく、注意してください」
私も焦り始めた。早めに洞窟観音へ行き、冥府と連絡を取る必要がある。
《観音像の中から、可能性のある像を探さなければ・・》
ベッドに横たわり、対策を考えていた。
「ん? なんだ?」
いつの間にか、私は寝ていたようだ。ベッドの横に誰かが立って、私にささめく。
「大河内さん・・。私ですよ・・。千代です」
私は驚き、ベッドに起き上がる。
「あ~、千代さん! 何故、ここに・・」
「冥界の防人が、恩人のあなたたちを権助が襲うらしいと、知らせてくれました。それに、洞窟観音へ行かれたでしょう?」
「はい、調べに行きました」
千代は半信半疑だったが、福沢の洞窟観音視察で理解したという。前回の場所は、永遠に封鎖されているので、今は洞窟観音が最適な場所であると教える。
最後に、必ず13、21、34番目の仏像を選ぶことを伝え、目の前から消えた。