微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)ⅩⅤ
「ええ、主任。私も、おやっと思いました」
注文した料理が来る前に、飲み物で乾杯。若月が、気持ち良さそうにビールを飲む。福沢は赤ワインを、味わいながら飲んだ。私は相変わらずコカ・コーラで済ませる。
「ところで、高崎の洞窟観音は、いかがでしたか?」
福沢が、カバンからパンフレットを取り出す。
「これです。いや~、見事な場所でした」
私と若月が、見せられたパンフレットを覗き込む。内容を読んだ私は、驚き感心する。
「これは、素晴らしい。早く行きたいですね」
「そうでしょう? ここなら、冥府との連絡が可能に違いない」
福沢も行った甲斐が有ると喜ぶ。
「じゃ、いつ行くのですか? 主任・・」
「うん、次の土曜日か日曜日だな。多分・・」
この段階では、確かな返事ができない。
「早くしないと、私が食い殺されてしまう」
「えっ、食い殺されるって、どうしてですか?」
「実は・・」
昨晩のことを、福沢に説明した。
「それは、また怖い話ですね。尚更、綿密に打ち合わせ、早く対処しないと・・」
福沢は驚きの表情で、若月を見た。
「私だけでなく、主任も狙われています。もしかしたら、福沢先生だって危ないかもしれませんよ」
若月は視線を福沢に合わせ、怖さを共有しようと思っているようだ。
「もちろん、私も理解している。相当な覚悟が必要と思われる」
若月の意見に対し、真摯な態度で福沢が受け止める。
「相手も、真剣勝負で向かってくると、私は考えている。だから、三人でしっかり計画を練らないといけない。分かったか、若月よ」
「ええ、そうですよ。私も大学の文献を調べ、完璧な対応を探します」
人間対邪鬼の戦いだ。簡単には行かないだろう。それには、冥界の助けがいる。