ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   湖畔  (大河内晋介シリーズ第五弾)Ⅵ 

 若月は急ぎ夏帆の所へ行き、幾度も頭を下げ手を合わせた。その様子に、私は独りほくそ笑む。
 一日中仕事に追われ、あっという間に退社時間となった。帰り際に、夏帆が近寄り私を睨んだ。
「大河内主任、邪魔しないでね。今日の夕食は、楽しみにしていたんだから・・」
「あ~、ごめん。分かった・・」
 一瞬癪に障るが、反面羨ましくもあった。
「主任、行きましょう」
「ほんの前に、お前の所為で睨まれたぞ。殺されるかと思った。あ~、怖・・」
 若月がチラッと夏帆に目をやる。彼女がプイと横を向いた。
「だろう? 相当に怒っているぜ。お前の恋も終着駅だな。俺は知らんからな・・」
「そ、それはあんまりだ」
 彼はおろおろするばかり。
「彼女は執念深いぞぉ~」
「主任、やはりデートに行きます」
 彼は行ってしまった。退社前に、福沢へ連絡する。
「今晩は・・。昨日の件で、お会いできますか?」
「ええ、いいですよ。できれば研究室に、来られませんか?」
「分かりました。直ぐにお伺いします」
 机上を整理してから、退社する。
「主任、行きましょう」
 階下のロビーに、若月が待っていた。
「あれ、どうした彼女は?」
「いや~、叱られました。態度があやふやな男は、嫌いだって言われました」
 照れ臭そうに、私の顔を見る。私は呆れたが、彼らしいと思った。
「福沢准教授の研究室へ、行くことになった」
「それは、久しぶりだ。あのメンバーにも、会えるのですね」

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