ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   湖畔  (大河内晋介シリーズ第五弾)Ⅴ 

「えっ、なぜかしら?」
「はい、あなたにとても会いたがっています」
「まあ、そんな・・」
 あの世の人とは思えぬ仕草で、顔を赤らめた。
「一度、会ってください」
 御堂は俯き、しばらく考える。その様子を眺め、自分でも素敵な女性だと思った。
「会うことは・・、問題無いでしょうけど・・、心を通わせることは、とても危険な行為なの」
「・・・」
「私は下位の世界へ送られ、この世に二度と戻れない。そして、福沢さんは冥府の世に、引き込まれてしまうわ」
 切なく語る彼女に、私の心が苦しめられた。
「ええ、それは理解できます。私も苦しみ悩みましたから・・」
「あら、誰のことかしら? ふふ・・」
 愉快そうに私の表情を覗き見る。私は慌てて、あらぬ方向へ顔を向けた。
「それでは、近い内にお会いしますわ」
 あっという間に姿を消した。私は、しばらく道祖神の前に佇む。ふっと息を吐き、家路につく。
 翌日、出社してから、直ぐに若月を呼ぶ。
「若月、今日の退社後、俺に付き合ってくれ・・」
「え~、今晩ですか?」
「なんだ、予定があるのか?」
 若月の態度が、さっぱりしない。
「ん~、まだ決めていないけど・・」
 彼が、チラッと事務員の夏帆を見た。私は状況を察した。
「分かった。デートの邪魔はしないよ」
「ま、待ってください。内容だけでも、教えて下さいよ」
 私はかいつまんで説明する。彼の顔が一変した。
「それなら、主任が優先です」

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