ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

2018年2月のブログ記事

  •    謂れ無き存在 ⅣⅩⅦ 

     明恵母さんは、朝から待っていたらしい。家の前に車を停めると、直ぐ玄関口に顔を覗かせた。 「いつ来るかと、落ち着かなかったわ。お帰りなさい」  その様子に俺と真美は、顔を綻ばせる。 「ただいま、お母さん!」  真美は、明恵母さんに抱きついた。俺は、目を合わせ軽く頷く。 「お昼は食べたの? お腹、空... 続きをみる

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  •    謂れ無き存在 ⅣⅩⅥ 

     ふたりは黙々と食べた。話をする暇も無く食べ終わる。 「ふぅ~、食べた、食べた。満足したよ」 「そうね。でも、デザートが食べたいな。洸輝は?」 「え~、まだ食べるの?」 「当たり前でしょう。デザートを食べなければ、食事が終わりと言えないわ。私はマンゴー・パフェにする」  デザートの名前を聞いた途端... 続きをみる

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  •    謂れ無き存在 ⅣⅩⅤ 

     俺は肉の脂が苦手だ。250gの特大ヒレステーキを注文した。真美も負けずに注文。 「真美、本当に大丈夫か?」 「平気よ。お金も胃袋も・・、安心して食べなさい」  真美は、店内を見渡し、何故か嬉しそうな様子。 「どうして、そんなに嬉しそうな顔を、しているんだい?」 「んん、だって、今までは来れなかっ... 続きをみる

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  •    謂れ無き存在 ⅣⅩⅣ 

     ふたりは観音様を見上げる。 《こうべを少し垂れ、優しい眼差しで見詰める顔。ふっくらとした顔は、真美に似ているなぁ。とても綺麗で美しい》 「いや、それほどでも・・」 「え、何が?」 「ママたちもここに来て、何かを願ったんでしょうね」 「うん、そうかも・・。さあ、帰ろうか?」 「ええ、帰りましょう。... 続きをみる

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  •    謂れ無き存在 ⅣⅩⅢ 

     観音山忠霊塔前の駐車場に車を停めた。ここから眺める高崎市の街並み。陽に輝く市街地と前に流れる烏川。四季折々の景色は美しい。俺は好きだった。  高崎白衣観音まで歩くことにした。参道は平日のため車両が通行可能。意外に車の往来が激しい。歩いている人影は見えなかった。ふたりだけだ。 「もう、紅葉が終わる... 続きをみる

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  •    謂れ無き存在 ⅣⅩⅡ 

    「ご、ごめん。どうか、機嫌を直して・・」  俺は手を合わせ、拝む仕草で謝る。何気なくバック・ミラーに目をやると、真美の目に遭遇。ミラーの位置を俺に合わせていたようだ。 「えっ! なんで?」  俺は驚き、彼女の横顔に目を移した。その横顔は、前を見ながら笑いを堪えている。 「うふふ・・」  俺のジャン... 続きをみる

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  •    謂れ無き存在 ⅣⅩⅠ 

    「もしかして、車の中にいる人かい? 」 「ああ、そうです」 「凄い別嬪さんだね。女優の誰かに似ているなぁ。本当に結婚するのかい?」  社長は疑い、興味津々に車の真美を見る。 「真美! こっちに来てよ・・」  俺は真美を呼んだ。 「社長が、信じてくれないんだ。俺たちの結婚を・・」  彼女は車から降り... 続きをみる

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  •    謂れ無き存在 ⅣⅩ 

     食事をしながら、俺の心を読む真美。涙がホットケーキの上に零れ落ちる。真美が手の甲でふき取り、俺を直視した。 「ねえ、洸輝・・」 「ん?」 「明恵母さんから、お母さんのお墓を聞けるかしら? それに身を投げた場所も・・」 「え、何故だい?」 「だって、あなたはお母さんを恨み、自分の不幸をお母さんの所... 続きをみる

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  •    謂れ無き存在 ⅢⅩⅨ 

     腹が減って、我武者羅にハム・エッグを食べようとした。 「オウ、マイ ダーリン! 先に野菜を食べてから・・」  差し出した手を叩き、眉をひそめて注意する。 「えっ?」  俺は一瞬たじろぐ。 「だって、健康は大事よ。長生きしてね。もう、独りになりたくない・・から」 「うん、そうするよ」  俺は素直に... 続きをみる

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  •    謂れ無き存在 ⅢⅩⅧ 

     俺は裸の真美を、怖々と抱きしめる。 《これは幻ではない。本当に、現実なんだ・・。この温もり、真美の温もりが愛しい》 「ええ、幻想じゃないわ。漸く・・、独りの生活から抜け出せた。私は幸せよ・・」 「そうさ、これからは独りじゃない。それに、俺も自分の存在を認め、生きる意識が持てそうだ。真美のお陰だよ... 続きをみる

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  •    謂れ無き存在 ⅢⅩⅦ 

    「君は、このことを知っていたのかい?」 「ええ、知っていたわ。でも、運命の人があなたとは分からなかった」  確かに真美の言うとおりだ。偶然としか思えない。 「そうだね。この二日間が目まぐるしく感じる。精神的に参ったよ」 「洸輝・・、メランコリーにならないでね。心配だわ」 《メランコリー? あっ、そ... 続きをみる

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  •    謂れ無き存在 ⅢⅩⅥ 

     明恵母さんが懐妊した喜びを、手紙に認め送ったらしい。俺の母親についても、書かれていた。ただ、三人の交流は徐々に薄れ、便りが遠退く。真美の母親は、寂しさを日記に綴るようになった。  その後、懐妊した真美の母親が、ふたりの親友宛に報告の便りを送る。だが、返事が来ない。  数か月後に、漸く明恵母さんか... 続きをみる

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  •    謂れ無き存在 ⅢⅩⅤ 

    「あ、あ~、真美・・」  真美の後ろ姿を見ながら、今の俺には彼女の温もりが必要だと感じた。いや、単なる温もりではない。彼女が愛しい存在となった。 《待てよ。これでは真美の思い通りだ。冷静に、冷静にならねば・・》 「いいのよ。冷静にならなくても、私が必要なんでしょう」  部屋から戻った真美が、微笑み... 続きをみる

  •    謂れ無き存在 ⅢⅩⅣ

    「防寒具だなんて、可笑しな表現だね。確かに温かいよ」 「でしょう~。気にいったかしら」  ますます密着する。 「勿論さ。最高級の防寒具だ! アッハハ・・」 「うふふ・・」 「ところで、明恵母さんの秘めた過去だけど・・」  室内に流れていた和やかな空気が、一瞬に滞り真美の顔が沈む。俺の左手は、彼女の... 続きをみる

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  •    謂れ無き存在 ⅢⅩⅢ

     半時後、別れを告げ箕郷に向かった。  運転する真美が、前方に注意を払いながら、意外なことを俺に告げる。 「ねえ、洸輝。実は・・、お母さんの心が、読めてしまったの。お母さんの心、とても悲しく辛い過去を持っている・・わ」  俺は信じられず、真美の横顔を見詰めた。彼女の頬に涙が零れ落ちる。俺は咄嗟に右... 続きをみる

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  •    謂れ無き存在 ⅢⅩⅡ 

    「でもね、お母さん! 不思議なことに、これは急に感じたの。それも、洸輝だけよ」  真美は俺の顔を見ながら、明恵母さんに打ち明ける。 「あら、そうなの・・。私も初めて主人に会ったとき、主人の心が読めたわ」 「えっ、嘘だろう? 本当かい?」  オヤジさんが、素っ頓狂な声を上げた。 「うふふ・・、本当よ... 続きをみる

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  •    謂れ無き存在 ⅢⅩⅠ

    「ご免なさいね。早く引き取るべきだった。随分、迷ったの。あなたのお母さんが、迎えに来ると思って・・。あなたが小学生になってから、密かに通い続けたわ」 「ええ、誰だか分からないけど、俺を見ている人がいると感じていた。ある時、仲間のヤッちゃんが、その人に声を掛けたら逃げちゃったらしい」 《俺は母親と思... 続きをみる

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