ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

 微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)ⅩⅦ

 私は忘れないように、教えられた番号をメモする。
《しかし、驚いたなぁ。千代さんが現れるなんて・・》
 朝までまどろみ、すっきりしないで起床した。熱いシャワーを浴び、眠気覚ましの強いコーヒーを飲んだ。朝食を済ませると、急ぎ駅に向かう。
「なんだろう?」
 歩く私に、後ろから強い視線を感じる。振り向くが、通勤の人たちだけ。仕方なく、駅前のコンビニに寄る。棚の陰から外を眺めた。男女の怪しい若者が、中を覗いている。不審な態度に、私は違和感を感じた。
《なんだか、嫌な感じだな。用心した方が、良さそうだ》
 必要の無い雑誌を購入し、外へ出る。私から近寄り、わざとらしくお経を唱えた。
「ギャァ~、おのれぇ~。あほくさいこと、やりよって・・。バカめが・・」
 瞬時に形相を変え、口汚く罵る。目が血走り、臭く汚れた鋭い牙。驚きの余り、腰が砕けそうになり、私はよろけてしまった。
「ウフフ・・、お前たちは生かしておけぬ。フフ・・」
 その時、和服姿の女性が、私を支えてくれた。
「大丈夫ですか?」
「あ、ありがとうございます」
 周囲を見ると、ヤツらの姿は消えていた。
「どうしたのですか?」
 辺りを見渡す私の仕草に、怪訝な様子だ。
「いえ、なんでも無いです」
「ところで、妙なことを、伺っても宜しいかしら?」
「はい、どうぞ・・」
 彼女は恥じらいながら、尋ねる。
「先ほど、お経を唱えていたでしょう? あなたがよろける寸前、私の背中に寒気を感じたの。不思議な感覚だったわ」
「・・・」
「あれって、何かしら?」
 彼女は、感じることができる人だ。でも、簡単に話す内容ではない。私は惑乱する。

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