湖畔 (大河内晋介シリーズ第五弾)Ⅷ
夕食を終え、中央の大型テーブルに集まる。それぞれが収集した情報を発表。しかし、予想外に少なかった。
「この内容では、解明ができない」
福沢が首を傾げ、困惑する。
「そうですね。これでは、現地に行っても意味が無い」
私も納得できない。咄嗟に、御堂の顔が浮かぶ。
「御堂さんの情報を待つしかないね」
突然に、研究室のドアがノックされた。全員がドアに目を向ける。
「ごめんください・・」
静まり返る部屋に、女性の声が響く。助手の女の子二人が、『ヒッ!』と悲鳴の声を上げた。渡瀬が恐る恐るドアを開ける。
「あ~、御堂さん。誰かと思ったよ」
胸を撫で下ろす。
「こんばんわ・・」
若いメンバーが、戸口に集まり喜んで迎えた。
「いらっしゃい。お待ちしていましたよ」
福沢が赤面しながら、御堂を迎える。私は目礼した。テーブルの中央に席を作り、彼女を座らせる。全員の目が注がれた。
「まぁ~、そんな眼差しで、見詰めないで下さいまし。恥ずかしいですもの・・」
「だって、こんな綺麗な人を目の前にするなんて、初めての経験だよ。なあ、みんな?」
「ええ、そうよ。私たち女性だって、見惚れてしまうわ」
「まあ、ほどほどにしないと、御堂さんが来なくなってしまう。それでは、困るよ」
福沢が真剣な面持ちで、助手たちをたしなめる。
「それで、御堂さん。何か情報が有りましたか?」
ようやく、落ち着いたので、私が肝心な事を尋ねた。
「はい、そのことですけど、相当に複雑な内容です」
彼女の浮かぬ顔に、全員が静まり返った。
「冥府の世界より、もっと深刻な闇の世界が動き始めたの」