ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   湖畔  (大河内晋介シリーズ第五弾)Ⅷ 

 夕食を終え、中央の大型テーブルに集まる。それぞれが収集した情報を発表。しかし、予想外に少なかった。
「この内容では、解明ができない」
 福沢が首を傾げ、困惑する。
「そうですね。これでは、現地に行っても意味が無い」
 私も納得できない。咄嗟に、御堂の顔が浮かぶ。
「御堂さんの情報を待つしかないね」
 突然に、研究室のドアがノックされた。全員がドアに目を向ける。
「ごめんください・・」
 静まり返る部屋に、女性の声が響く。助手の女の子二人が、『ヒッ!』と悲鳴の声を上げた。渡瀬が恐る恐るドアを開ける。
「あ~、御堂さん。誰かと思ったよ」
 胸を撫で下ろす。
「こんばんわ・・」
 若いメンバーが、戸口に集まり喜んで迎えた。
「いらっしゃい。お待ちしていましたよ」
 福沢が赤面しながら、御堂を迎える。私は目礼した。テーブルの中央に席を作り、彼女を座らせる。全員の目が注がれた。
「まぁ~、そんな眼差しで、見詰めないで下さいまし。恥ずかしいですもの・・」
「だって、こんな綺麗な人を目の前にするなんて、初めての経験だよ。なあ、みんな?」
「ええ、そうよ。私たち女性だって、見惚れてしまうわ」
「まあ、ほどほどにしないと、御堂さんが来なくなってしまう。それでは、困るよ」
 福沢が真剣な面持ちで、助手たちをたしなめる。
「それで、御堂さん。何か情報が有りましたか?」
 ようやく、落ち着いたので、私が肝心な事を尋ねた。
「はい、そのことですけど、相当に複雑な内容です」
 彼女の浮かぬ顔に、全員が静まり返った。
「冥府の世界より、もっと深刻な闇の世界が動き始めたの」

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