ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   偽りの恋 ⅥⅩⅨ 

 電車の単純な揺れに、疲れが眠気を誘う。千恵から健やかな寝息が聞こえる。俺も疲れていたが、この二日間を思い浮かべ脳がフル回転。千恵の予想外の振る舞いに、翻弄され続けた。思わせぶりの仕草に、心をときめかせ困惑する。俺は大きな溜め息を吐いた。 「ん、どうしたの?」  俺の動作を感じた彼女が、目を覚ました。 「いや、何も。ただ、疲れただけだ・・」 「私の所為でしょう? 後で、慰めてあげるね」  俺の耳…

   偽りの恋 ⅥⅩⅧ 

 こんな可愛い天使のような小悪魔に呆れる。どう対処すれば良いのか、俺は考え倦む。 「なによ、固まって。本当は嬉しいくせに、素直じゃないんだから・・」  唇を離し、恨めしく言った。 「ああ、嬉しいさ。でもね、素直になれないよ、小悪魔ちゃん!」 「えっ、なんで小悪魔なの?」  思わぬ言葉に、千恵が驚く。その驚きの仕草が、天使に変貌し俺を魅了する 「いや、いや、麗しい天使だった」 「もう、呆れた。変よ…

   偽りの恋 ⅥⅩⅦ 

 彷徨う俺の脳は、ハムレットの心境だ。恋か夢か、どちらを選ぶ。千恵に会うまでは、夢を現実に選んでいただろう。だが、彼女が目の前に現れ、俺の現実を夢から恋に浸食させよう試みている。 「千恵ちゃん、俺の脳が惑乱してる。困ったね」  俺の瞳を縛り付けたまま、鼻先をピンピンと弾き笑顔を見せた。 「と、言うことは、断れないのね? ふふ・・」 「ああ、確かにそうだ」  隠せない心情を打ち明けてしまった。 「…

   偽りの恋 ⅥⅩⅥ 

 気まずい思いで帰りの支度をする。千恵は無言のまま、事務所の椅子に座っていた。 時間を確認すると、夕刻の六時を過ぎていた。 「準備は、できたかな?」 「・・・」  相変わらず、俯いて反応しない。俺は千恵の前にしゃがみ、下から覗いた。 「いい加減に、許してくれよ。もう、あんなことは絶対にやらないから」  俺は手を合わせ、拝む仕草をする。すると、上目で俺を見た。 「金ちゃんの大バカさん!」  か細い…

   偽りの恋 ⅥⅩⅤ 

 高崎に戻り、車を返した。俺はシャワーを浴びて着替える。 「千恵ちゃんもシャワーを浴びなよ。俺は事務所にいるからね」 「うん、分かった・・」  千恵は不満のようだけど、仕方なく浴びる。待つこと半時ほどで、千恵が事務所に現れた。ミニのノー・スリーブのワンピース姿だ。浅黄色の服装に、同色の清楚なネックレス。突然の大人びた印象に、俺は呆気にとられる。 「うふふ・・、金ちゃんが、私に見惚れるなんて素敵ね…

   偽りの恋 ⅥⅩⅣ 

 目を閉じても、千恵の顔が瞼に残る。あの祖母の顔が、優しく微笑んだ。俺はどうすれば・・。自分の安易な行動が招いた結果である。 「うん、ちょっと考えさせてくれ」 「本当に?」 「ああ、本当だ。だけど、う~ん・・」  千恵の顔が一瞬明るさを取り戻すも、俺のあやふやな反応に再び顔を曇らす。 「ふ~ぅ。苦しい・・なぁ」  彼女がため息を吐く。 「千恵ちゃん・・、ごめんな。俺も苦しいよ」  鼻を弾き、ニコ…

   偽りの恋 ⅥⅩⅢ 

 谷川の名水冷やしラーメンを注文。二人は一時休戦状態。俺はゆっくり味わった。ガラス越しに望める谷川岳の緑に囲まれ、気分が穏やかになる。先に食べ終わった俺は、何気なく千恵の食べる様子を見ていた。 「ねえ、・・・」  千恵の足が、俺の脛を小突く。 「ん? 何が言いたい?」  警戒することなく、ぼんやりと尋ねる。 「本当に、ダメなの?」  割り箸に麺を絡ませ、おずおずと問い返す。 「だから、何がダメな…

   偽りの恋 ⅥⅩⅡ 

 千恵の手を握り、車に引き返す。車を戻すため、夕刻までに帰る必要があった。北陸道から長岡JCTで関越高速に入る。関越トンネルを越えた最初のパーキング・エリアで昼食にした。 「さあ、昼でも食べよう。早く降りて・・」  あれから、ずーっと千恵は言葉を交わさない。俺は運転しながら、千恵のことを考えていた。仕方なく、助手席側のドアを開け、千恵の腕を掴んだ。 「嫌よ、降りないわ」 「あ~、やっと人間の言葉…

   偽りの恋 ⅥⅩⅠ 

 千恵の瞳が眩しい。涙にキラリと光る。 「あぁ、・・・」  答える言葉が見つからず、俺の意識が脳内を彷徨う。 「金ちゃん、嫌なの?」  間近に迫るピンクの蕾。すーっと俺の唇に触れた。俺の意識は彷徨うのを忘れ、煩悩の誘いに頷いてしまった。  俺の左手が千恵を引き寄せ、しっかりと抱きしめてしまった。 「あ~、好き・・」  千恵の甘く切ない声が、俺の口の中で騒ぐ。俺の右手が不自然に動いた。彼女の体が瞬…

   偽りの恋 ⅥⅩ 

 新潟弥彦の旅は、千恵のことを思い恋人らしく振る舞う。祖母の家や弥彦神社参拝は、楽しい思い出となった。 「あの子は不憫な孫なんよ、だから頼みますね」  千恵の祖母が、彼女の生い立ちを打ち明ける。幼き時期に母が病死、父が再婚すると疎まれる存在となった。母の実家に預けられ、高校卒業と同時に神奈川へ就職する。 「あ~、はい。こちらこそ・・」  咄嗟のことで、俺は曖昧に答えてしまった。 「うふふ・・、こ…