ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物が、世界大会に参加する。笑い、涙、ロマンス、親子の絆の物語。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。心意を確かめるために、行方不明の彼を探す。そして、ハワイ島へ。
 忘れ水 幾星霜  偶然の出会いが必然なのか、憧れは恋へ。恋は愛へ。山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。ひょんな出会いからの交流。そして・・。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズの第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 雨宿りに続く大河内晋介シリーズの第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 怪奇な夢を見続ける主人公。夢に現れる和服姿の美しい女性。それは不思議な縁から始まるものであった。
 ア・ブルー・ティアズ 入院中の父子が生死の別れ際に触れ合う姿。その様子見た主人公が、自らの父に対する情念を考える。また、夜間の救急病院で起きる生と死のドラマ。

   謂れ無き存在 ⅥⅩⅦ 

 バトル・クリークに向かう道路は広く、対向車線を走る車が少なかった。周りの景色は紅葉が見事であった。 「本当に綺麗、想像以上の紅葉だわ。ねえ、あなた!」 「ああ、色が鮮やかだ・・」  オヤジさんが、ひっきりなしにカメラのシャッターを押す。 「でも、この紅葉の景色は、確か北海道東部の女満別空港の周辺に似ている」 「そうね、飛行機が降りるとき、凄い景色が見えたけど。ええ、思い出したわ。うん、確かに似…

   謂れ無き存在 ⅥⅩⅥ 

 こぢんまりしたロビー。二十人程度が座れる広さだった。一緒に降りた人たちは、地元の住人と思われる。迎えや駐車場の自家用車に乗って、姿を消してしまった。 「車が来たわよ。さあ、行きましょう」  外には、十人ほどが乗れるカーゴ車が待っていた。まるでクロネコ・ヤマト宅急便の車に似ている。 「ホ~ゥ、これか。こりゃぁ、荷物を載せてもゆったりだ」  オヤジさんが驚き、感心した。 「そうですね、普通のタクシ…

   謂れ無き存在 ⅥⅩⅤ 

「これから、国内線に乗り換えるのよ。洸輝、迷子にならないでね」  国内線のロビーから、国内線受付けに向かう。どこを見ても、外国人の顔ばかりだ。俺は恐怖を感じ始めた。 「どうした、洸輝君。先ほどから、キョロキョロと落ち着きが無いね」 「オヤジさん、ほとんど日本人らしき人が見当たりません」 「アハハ・・、いなくても、私たちがいるじゃないか。心配ないよ」  しかし、俺は日本人ばかりの生活に慣れていたか…

   謂れ無き存在 ⅥⅩⅣ 

 フワフワと体が揺れガクンと着陸するまで、俺は生きた心地がしなかった。無事に着陸すると、俺は神仏に感謝する。 「洸輝、体が強張っているわよ。大丈夫?」 「ああ、平気だ。なんでもないさ」  俺は、真美に弱みを見せないよう強がった。 「うっそ、本当は怖がっていたわ。ふふ・・」 《確かに、そうだ。初めてだから、仕方ないよ》  手荷物をまとめ、前から順に降りる。俺は真美の分まで運ぶ。 「これから、入国審…

   謂れ無き存在 ⅥⅩⅢ  

 機内の時間は、俺にとって随分長く感じられる。幾度も時計を確認。ただ、真美のお喋りが退屈を凌いでくれた。  早い夜が訪れ、軽い夜食後に機内の照明が落とされた。慣れない体のリズムが、目を覚ましたまま過ごす。真美と前のふたりは、静かに寝入っている。仕方なく、俺は耳にイヤホンをつけ、好きな音楽を選んで聴く。  突如、機内が明るくなり、俺は目を開けた。いつの間にか、眠っていたのだ。 「良く眠れたようね」…

   謂れ無き存在 ⅥⅩⅡ 

 出国審査を終え、真美と明恵母さんが免税店を覗き回る。俺は真美が行く所は、常に一緒だ。出発までは、かなりの余裕があった。 「明恵母さん、意外に時間が有るんですね」 「そうね、いつもそうよ。疲れるでしょう」 「はい、行くまでに疲れました」  俺たちのフライト便がアナウンスされた。 「さあ、ゲートに行こうか・・」  漸く、機内に入れた。狭い座席を想像していたら、意外にもビジネス席だった。 「あれ、エ…

   謂れ無き存在 ⅥⅩⅠ 

 成田国際空港出発ロビーに到着。俺は、ただ三人の後を従うだけだ。頭の中は真っ白で、何も考えが及ばない。ANA航空のカウンターでチケットの手続き。旅行ケースを預けると、出発時間まで空港内を散策。  オヤジさんが早めの昼食を提案し、階上のレストランへ行く。滑走路が見える窓際に座った。 《旅行の間は、レストランの食事ばかりだろうな。帰るまで、日本食はお預けだ》  俺は天ぷら定食を頼んだ。他の三人は、サ…

   謂れ無き存在 ⅥⅩ 

 オヤジさんと俺が朝食をしてる間に、明恵母さんと真美が一緒に入浴。ふたりの笑い声が、浴室から響いてくる。俺とオヤジさんは、目を合わせ微笑む。  高崎駅までは、オヤジさんの商用車で行くことになった。  俺が旅行ケースを車に積み込んでいると、別人に見紛う真美が現れる。 《おっ! ワォ~、本当に真美なのか・・》  長めの髪をきゅっと後ろに引き詰め、ポニーテールに鮮やかなグリーンのバンドで束ねた真美。薄…

   謂れ無き存在 ⅤⅩⅨ 

「でもさ、真美が完全な英語を話すの、俺はまだ聞いてないよ」 「フフ・・、もし、喋ったら分かるの?」 「いや、分かる訳ないから、喋らなくてもいい・・」  楽しい時間が過ぎて行く。 「あら、もうこんな時間に・・。明日は早く出掛けるのよ。早く寝ましょう」 「そうだね。年寄りは、自然に早く目が覚めるが、若いふたりは起きられない。バスに乗り遅れたら大変だ」  明恵母さんとオヤジさんが、心配した。その晩は、…

   謂れ無き存在 ⅤⅩⅧ 

 十日後、旅行の手続きが整った。出発の前日、家族全員で荷物の整理。あれだ、これだと大騒ぎ。俺は厳しい寒さに耐える衣服を準備する。 「まあ、驚いたわ。そんなに防寒具を持って行くの?」  明恵母さんが驚く。 「だって、この高崎よりもっと寒いって言うから、用意しておかないとね」 「大丈夫、少しオーバーに話しただけよ。だから、安心して・・洸輝。この時期は、とても紅葉が綺麗なの。お母さんも喜ぶと思うわ」 …