ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物が、世界大会に参加する。笑い、涙、ロマンス、親子の絆の物語。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。心意を確かめるために、行方不明の彼を探す。そして、ハワイ島へ。
 忘れ水 幾星霜  偶然の出会いが必然なのか、憧れは恋へ。恋は愛へ。山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。ひょんな出会いからの交流。そして・・。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズの第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 雨宿りに続く大河内晋介シリーズの第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 怪奇な夢を見続ける主人公。夢に現れる和服姿の美しい女性。それは不思議な縁から始まるものであった。
 ア・ブルー・ティアズ 入院中の父子が生死の別れ際に触れ合う姿。その様子見た主人公が、自らの父に対する情念を考える。また、夜間の救急病院で起きる生と死のドラマ。

   謂れ無き存在 ⅦⅩⅦ 

 牧師のオヤジさんから問われるまま、ふたりは素直に答えた。 「それでは、指輪の交換をして下さい」  俺は一瞬固まる。 《しまった。指輪を用意していなかった。え~、どうしよう》 「トーマスオジサン、リング プリーズ!」 「オッケイ メッチェン」  後ろに控えていたトマース小父さんが、小箱を取り出した。 「ごめん、真美・・」 「いいのよ、洸輝。私がトーマス小父さんに頼んでおいたから、安心して・・」 …

   謂れ無き存在 ⅦⅩⅥ 

 深まる秋の風に吹かれ、五人の思いが空へ舞う。トーマス小父さんも何かを呟き、胸の前で十字を切った。瞳に涙を浮かべている。 《トーマス小父さんって、優しい人なんだな。俺は好きになった》 「洸輝、ありがとう。彼も、あなたが好きだって思っているわ」 「そうか、もっと話せるといいね。頑張って、英語を覚えなきゃ・・」  俺の眼差しに気付き、彼はウインクする。俺は片手を上げて応じた。 「ナウ、 レッツ ゴオ…

   謂れ無き存在 ⅦⅩⅤ 

 車は市街地を出ると、幹線道路を走った。しばらくして、脇道にそれる。細い林道は、まるで紅葉のトンネルだった。 「凄いロマンチックな景色ね。あなたたちにぴったりよ」  明恵母さんがうっとりと眺め、隣に座る真美に呟いた。  トンネルをくぐり抜けると、前方の視界が広がった。そこは、広大な墓地である。片隅に白亜の教会が、ひっそりと建つ。 「近くで見ると、かなり古そうな教会のようだね」  オヤジさんが、興…

   謂れ無き存在 ⅦⅩⅣ 

 トーマス小父さんは親指を立て、大きな口を開けて笑った。 「どうしたの? 大騒ぎだこと・・」  明恵母さんが、真美の試着室から顔を見せる。 「いや、なんでもないよ。それで、真美さんの具合はどうかな?」 「ええ、ぴったりよ。とても綺麗で、可愛い花嫁になったわ」 「早く見たいもんだ・・」  オヤジさんがソワソワと待ちわびる。俺も早く見たいと思った。 《真美の花嫁姿かぁ~、ドキドキするな》  試着室の…

   謂れ無き存在 ⅦⅩⅢ 

 トーマス小父さんの案内で、センターの中を歩く。日本と余り変わらない風景だ。真美が、落ち着かない俺を心配している。俺の手をしっかり握り、離さないでいた。 「さあ、ここよ」  目の前のお店は、レンタル・ショップであった。 「トーマス小父さんに頼んでいたの」 「えっ、何を?」  真美と明恵母さんが目を合わせ、笑顔で頷く。トーマス小父さんと店員が、俺たちの方へ目を向けながら話している。店員がニコリと微…

   謂れ無き存在 ⅦⅩⅡ 

「この街は、デトロイトに近いでしょう。だから、デトロイトの工場地帯へ機材を運ぶ貨物車が通るの。この街だって、ケロッグの工場があるわ」 「なるほど、デトロイトは自動車産業で有名だよな」  オヤジさんが納得して、頷く。 「ケロッグと言えば、高崎にも工場が有るよね。施設の朝食で、良く食べさせられたな」 「そう、そう、確かにそうだ。高崎の姉妹都市もこの縁でなったらしい」 「ええ、私も知っているわ。夏休み…

   謂れ無き存在 ⅦⅩⅠ

 部屋に戻った二人、食事会の高揚が続いていた。真美が英語を交えて喋り、俺の軽い脳は沈黙。ただ、理解できる範囲で、頷くしかなかった。 「どうしたの? 黙ったままで・・」 「いいや、聞いているだけで、十分だよ」 「あ~、分かった。他のことを、考えているのね」 「いいや、何も考えていないよ」 「いいえ、考えているわ。これからの事でしょう?」 「はあ? これからの事・・。これから、どこへ行くんだい?」 …

   謂れ無き存在 ⅦⅩ 

 そこへ明恵母さんとオヤジさんがやって来た。 「初めまして、真美の母です。それに父です」 「まあ、本当に? メッチェンは幸せになったのね」 「はい、私たちもです」  先生夫婦と母さんたちは、意気投合したようだ。俺は真美に呼ばれ、トーマス小父さんと三人で話し合う。 「洸輝、明日はママのお墓に行くけど、そこで結婚式をしたいの」 「え、結婚式?」 「そうよ、嫌なの?」  俺は驚いたが、彼女の望むことな…

   謂れ無き存在 ⅥⅩⅨ 

 着替えると、ホテルの外へ散策。 「本当に、静かで落ち着いた町だね」  真美の案内で、図書館や市役所を見て回る。風が冷たく感じ、真美が体を寄せて来た。 彼女の温もりが伝わる。 「でもね、独りになったときは、この静けさが怖かったわ。特に、夜になると、寂しくて泣いて過ごしたの」  真美の言葉に、小さな肩を強く引き寄せる。 「私が暮らした家は、この直ぐ先にあるわ。今は、誰かが住んでいると思う・・」  …

   謂れ無き存在 ⅥⅩⅧ 

 至ってシンプルなロビー。受付けで一枚の用紙にサインをする。サイン以外は、真美が書き込んだ。俺の名前の横にハズバンドと書かれていた。受付けの女性から、握手を求められる。 「えっ?」  俺は応じた。早口で何かを言われた。 「彼女、私の知り合いなの。結婚のお祝いを言ってるから、礼を答えれば・・」  真美が説明する。俺は笑顔で、決まり文句で答えた。 「センキュウ、センキュウ」  受付けが終わり、部屋に…