ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物が、世界大会に参加する。笑い、涙、ロマンス、親子の絆の物語。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。心意を確かめるために、行方不明の彼を探す。そして、ハワイ島へ。
 忘れ水 幾星霜  偶然の出会いが必然なのか、憧れは恋へ。恋は愛へ。山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。ひょんな出会いからの交流。そして・・。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズの第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 雨宿りに続く大河内晋介シリーズの第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 怪奇な夢を見続ける主人公。夢に現れる和服姿の美しい女性。それは不思議な縁から始まるものであった。
 ア・ブルー・ティアズ 入院中の父子が生死の別れ際に触れ合う姿。その様子見た主人公が、自らの父に対する情念を考える。また、夜間の救急病院で起きる生と死のドラマ。

   謂れ無き存在 ⅩⅠ 

 俺は、間違いなく夢の中にいる。ナポリタンの味がする夢の中だ。こんな夢物語が、現実に在り得る訳がない。  たった数時間前に出会って、愛を語り。初めて抱く女性の体。官能的なくちづけ。 《夢なら覚めないで欲しい。真美が幻でなく、本当の真美であって欲しい》 「洸輝、ねえ、洸輝! どうしたの? ボーっとして」 《あっ、声がする》  真美が俺の鼻を二度ほど小突く。 「ん? なんだ? 俺は・・」 「頭が変に…

   謂れ無き存在 Ⅹ 

 ふたりは話のことを忘れ、気持ちを料理に向けていた。 《この家庭的な雰囲気は、俺にとって無縁な環境だったな。望むことさえ考えていなかった》  俺は鍋の茹るパスタを見詰め、幸せの味を考えていた。 《甘い、辛い、それとも苦いのだろうか。小さい頃は、味なんて考えてもいなかった。施設の仲間とたらふく食べることが、大きな幸せと感じていたよな》 「コ・ウ・キ、これからは、私と一緒に幸せの味を楽しみましょう。…

   謂れ無き存在 Ⅸ 

「分かった、一緒に行こう。でもさ・・。その前に、真美のことが知りたい」  俺は気心が知り得たと考え、肝心な事を切り出す。すると、彼女の表情が硬化した。 「話すのが苦痛なら、追々でいいよ」  真美を追い詰める気持ちはない。待つしかないと思った。 「いいえ、話すわ。もう、隠す必要がないもの。洸輝さんには、大事なことですものね」  新しく紅茶を入れてくれたので、飲みながら頷いた。彼女は、カップを持って…

   謂れ無き存在 Ⅷ 

 俺の唇に、微かに触れた真美の唇。触れる寸前に、彼女の芳しい息が俺の鼻をくすぐる。その柔らかな唇と爽やかな息が、真美の初々しい情味を伝え俺を震撼させた。  真美の真情が理解でき、俺は彼女の肩を引き寄せる。 「あ~、・・・」  真美が甘い吐息をつく。俺の感情の箍が緩み、煩悩で真美の唇を吸ってしまった。ふたりは、初めての経験に溺れる。暫し、我を忘れる思いであった。  互いに息が苦しくなり唇を離す。ふ…

   謂れ無き存在 Ⅶ 

 運転中の真美は、真剣な眼差しで前方を見詰めている。白い肌の耳元に、小さなほくろを見つけた。その横顔に俺は見惚れる。 《真美の奥に秘められた、本当の姿が分からない。実際のところ、歳だって曖昧だ。幼く麗かな表情を見せるかと思えば、年上の気品さが滲み出る》  車は彼女の言葉とは裏腹に、可なりの距離を走っている。高崎市街地を出て、榛名山に向かう。漸く途中の箕郷梅林を過ぎたころ、舗装されていない小道に車…

   謂れ無き存在 Ⅵ 

 俺はケーキを食べながら考えていた。 《確かに運命で結ばれたとしても、俺の出生や過去のことを知れば、真美は離れて行くだろう。過去を明らかにして、判断を委ねた方がいいかも。彼女を不幸にさせる訳にはいかない》  真美が徐にフォークを置き、カップの紅茶を静かに飲む。そして、俺の瞳を覗き込んだ。俺はそれに応え、真美の瞳を直視する。 「ねえ、洸輝さん。心配しないで、私はあなたを信じている。あなたの過去は知…

   謂れ無き存在 Ⅴ

 彼女は目を瞑り思案しているようだ。恐らく、俺の心を解釈しているのだろう。目を開けると、二度ばかり首を振る。 「これからは、洸輝さんと呼ぶわ。いいでしょう?」 「・・・」 「そして、私のことを、真美と呼んでね」  俺は唖然とした。 《俺は彼女の言いなりか? 俺の立場は、どうなるんだ? これが与えられた運命?》 「ええ、そうよ。そうすれば、洸輝さんの未来が見えて来るわ」 「俺と真美さんが結婚するの…

   謂れ無き存在 Ⅳ

 メモを見て、何かを考えていた。 「何を考えているんですか?」 「う~ん、そうね~。一緒に行っても良いかしら?」  俺は興味もなく、行くなんて考えてもいなかった。 「別に・・、だって、俺は行くつもりなんてないから・・」 「いいえ、あなたは必ず行くわ」 「えっ、なんで、行く必要があるの? 俺は行かない」  彼女は、あの瞳でじっと俺を見詰める。そして、微笑む。 《あっ、狡い! 弱みに付け込み、俺を誘…

   謂れ無き存在 Ⅲ 

「俺は、あなたを知りません。初めてですが・・」 「ええ、私もよ。だって、あのセミナーに参加したのは、今日が初めてですもの」 「いや、俺も初めて参加した」  俺は、彼女の瞳を初めて見ることができた。 《なんだ! この瞳は・・。俺の魂が吸い込まれる。あ~、綺麗だなぁ~》  彼女の瞳を見詰めたまま、俺の記憶は夢遊病者の様に歩き回る。 「そんなに見詰めないで、恥ずかしいわ」  謎めく天使の声に、俺は目覚…

   謂れ無き存在 Ⅱ 

「俺の運命が真っ白! そうですか・・」 「いや、がっかりしなくても、いいと思うよ」  講師は、俺の目を見詰めた。ふっとため息を吐き、俺の肩をポンポンと叩く。そして、一枚のメモを俺に渡した。 【君に話すことがある。いつでも良いから、私の家に来なさい。住所は裏に書いてある。できれば、来る前に電話を掛けて欲しい】 「それでは皆さん! 次回にお会いしましょう」  机上の書類を片付け、カバンの中に仕舞う。…