ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   謂れ無き存在 ⅣⅩ 

 食事をしながら、俺の心を読む真美。涙がホットケーキの上に零れ落ちる。真美が手の甲でふき取り、俺を直視した。
「ねえ、洸輝・・」
「ん?」
「明恵母さんから、お母さんのお墓を聞けるかしら? それに身を投げた場所も・・」
「え、何故だい?」
「だって、あなたはお母さんを恨み、自分の不幸をお母さんの所為にしていた。でも、お母さんの温もりを執拗に追い求めているでしょう?」
 確かに、俺の気持ちはちぐはぐで、苦悩な日々を過ごしてきた。
「そうだね。過去の未練を執拗に追い求めていた。毎日が遣り切れなかった」
「だから、新しい道を歩むためにも、未練を断ち切るべきよ。でも、お母さんには感謝しなさい」
「・・・」
「お母さんは自分の死を選んだけど、あなたには生きる道を残した。結果、あなたは私の運命の人となった。だから、お母さんはあなたの幸せを望んだのよ」
 真美の考えは、俺の心に光明を抱かせた。
「そうか、母さんを恨んではいけない。でも、死を選び身を投げるなんて、遣る瀬無い思いだ。どこかで生きていて欲しかった」
「私だって思うわ。私の親も・・」
 真美の顔が沈む。俺は心が痛んだ。
「ごめん、真美の気持ちを置き去りにして、自分だけを考えてしまった」
 俺は立ち上がり、座っている真美を後ろから抱きしめた。真美は目の前に合わされた俺の手に、軽く口を寄せる。
「ありがとう。私のダーリン・・」
 真美の頬に俺の頬を寄せ、幾度も頷いた。
「まだ、食べきれていないわ。早く済ませましょうよ」
「そうだね・・」
 俺は自分の席に戻ると、全てを平らげる。心まで満腹になった気分だ。
「ふ~ぅ、ご馳走さま。美味しかったよ」
「良かった・・。明恵母さんから料理を教わって、レベルアップしなければね。洸輝が食べ残さない様に、頑張って美味しいものを作るわ」
 食事の後片付けを手伝う。
「ところで、向こうで一緒に住むのは止め、ここから通ったらどうかしら?」
「うん、俺も考えていたんだ。しばらく様子を見てからでも、遅くはないだろう」
「そうね、そうしましょう」
「分かった。今日は、やることが沢山ある」
 俺は、バイト先に顔を出して、社長に辞めることを告げる。社長は驚いた様子だったが、内容を聞くと喜んでくれた。

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