ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   謂れ無き存在 ⅢⅩⅤ 

「あ、あ~、真美・・」
 真美の後ろ姿を見ながら、今の俺には彼女の温もりが必要だと感じた。いや、単なる温もりではない。彼女が愛しい存在となった。
《待てよ。これでは真美の思い通りだ。冷静に、冷静にならねば・・》
「いいのよ。冷静にならなくても、私が必要なんでしょう」
 部屋から戻った真美が、微笑みながら俺の心を読んでいた。
「はい、これを読んで・・」
 使い込んだ皮表紙の日記帳を、俺に差し出す。
「誰の日記帳?」
「私のママが書いていた日記よ。でも、ほんの僅かだけ・・。後は、私が使っているわ」
「俺が、読んでもいいの?」
 真美はにこやかに頷く。
「勿論よ。私の洸輝だから・・」
 俺は、その言葉に弱い。顔が火照る。
 読み始めようと、表紙のボタンを外しかけた。
「あっ、ちょっと待って。今回はママの日記だけにして・・」
「えっ、どうして?」
「だって、あなたに関係する内容は、ママの日記だからよ」
 真剣な眼差しで、日記と俺の顔を見た。俺が不満の顔をすると、急に訝しい眼差しで謎めくように呟いた。
「うふふ・・。私のことは、ヒ・ミ・ツね。分かった~ぁ? 後でゆっくり読んであげるから。うふふ・・」
 訝しい眼差しに、俺は一瞬たじろぐ。
《でも、この眼差しは素敵だ。可愛いな》
「こら、余計なことを考えるな! 素敵で可愛いのは、当たり前でしょう」
 俺は訳も無くへこたれ、ペコペコと頭を下げた。そして、真美の母親が書いた日記に目を置く。
「私も一緒に読むわ」
 真美が俺の横に並んで座る。俺の左肩に頭を乗せ、日記を覗き込んだ。
 両親と別離し、アメリカの生活を選んだ心境。不慣れな異国生活の喜びや不安。日記は読み易い繊細な文字で、事細かに書かれてあった。
 一年を過ぎた頃から、徐々に乱雑な文体へと変化し始める。しばらくすると、明恵母さんの名前が現れた。俺は一字一句を確かめ、考えながら読む。
 

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