微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)Ⅳ
「おい、待てよ。その高架橋へ行ってみよう」
「えっ、反対方向ですよ」
「構わん、そこへ案内してくれ」
若月は、渋々従う。一旦、首都高速を降りる。迂回してから再び首都高速を走った。
「そういえば、引っ越したんだっけ・・」
「でも、近い内に、主任の家の方へ越そうと考えています」
「どうして?」
「いや、なんとなく。近ければ、あの世界が・・」
その瞬間、オフのラジオから雑音が流れる。私は耳を疑う。
「これは・・」
残念なことに、直ぐに雑音が消えた。
「主任、高架橋とは関係なさそうですね」
「ああ、関係ないようだ」
私はあれこれと、考えた。
「よし、オレの家に戻ろう!」
「えっ、ウソでしょう・・」
ブツブツ言いながら、首都高速を降り迂回する。途中、コンビニにより飲み物を購入した。そのまま駐車場で、喉を潤し頭を巡らせる。
「うん、そうだ! 若月、車に乗った時、向こうの世界を考えたか?」
「はい、確かに考えました。チラッと千代さんのことを・・」
ガガッ、ザザァ~と、雑音が前後左右のスピーカーに流れる。若月は慌て、缶コーヒーを落としそうになった。
「あ~、驚いたなぁ~」
「やっぱりな。この車が、仲介しているんだよ。あの世界と・・」
あの時、彼は自ら千代に触れられ、力を得たのだ。私は関知していたが、敢えて彼に喋らなかった。
不意に、雑音が女の子の声に変わる。私の背筋に悪寒が走り、隣の若月も愕然とした。