ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   偽りの恋 ⅥⅩⅤ 

 高崎に戻り、車を返した。俺はシャワーを浴びて着替える。
「千恵ちゃんもシャワーを浴びなよ。俺は事務所にいるからね」
「うん、分かった・・」
 千恵は不満のようだけど、仕方なく浴びる。待つこと半時ほどで、千恵が事務所に現れた。ミニのノー・スリーブのワンピース姿だ。浅黄色の服装に、同色の清楚なネックレス。突然の大人びた印象に、俺は呆気にとられる。
「うふふ・・、金ちゃんが、私に見惚れるなんて素敵ね。嬉しい・・」
「恥ずかしいこと、言うなよ。ドライヤーで、しっかり髪を乾かしたかい?」
「ううん、探しても見つからなかった」
 棚の奥に仕舞い込んだので、探せなかったようだ。
「はい、ここにあるよ」
「金ちゃんが乾かしてよ。いいでしょう?」
 こだわる必要もなく俺は承諾する。彼女の髪を指で梳くい、ドライヤーの風を柔らかく当てた。リンスの香りが広がる。
「わぁ~、気持ちがいいわ。金ちゃんって、上手ね・・」
 千恵はうっとりと心を奪われる様子。俺の脳は難しい計算式を考える。
「金ちゃん・・、金ちゃん・・、もう、熱いから止めてよ」
 肘で俺の胸を小突く。
「あっ、悪い悪いごめん・・」
 口を窄め、機嫌を損ねる。俺は謝りながら、髪を優しく撫でた。
「もう、平気よ。でも、金ちゃんが髪を触ると、ゾクゾクするね。ふふ・・」
 これ以上はやぶ蛇になる。俺は話を切り上げ、事務所へ行く。
「金ちゃんのバカ・・、直ぐ逃げるんだから、大嫌いよ!」
 千恵の不機嫌な声が、後ろから追いかけてくる。俺は心の中で笑った。
「わっ!」
 振り返りざまに、驚かす。千恵は一瞬立ち止まり、目を見開き震えあがった。
「・・・」
 俺は後悔した。体を強張らせ、その場に立ち尽くす千恵。
「ごめん、急に驚かせて悪かった・・」
 千恵の体を抱きしめる。だが、彼女は体をひねり曲げ、頑なに俺の腕を避けた。

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