ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   偽りの恋 Ⅶ 

 正直に話すべきだろうか、俺は悩む。知り合ったばかりの人に、話すことでもないと考えた。
「いや、いないよ。恋なんて、ほとんどが片思いだろう。それに似た恋は、したことがあるけど」
 佐藤は、顔色を窺う目で俺を見ている。
「そうかしら・・」
「ああ、そうだよ」
 俺は、彼女の顔を直視する。瞳には、戸惑いが見え隠れしていた。
「そう、それなら、いいわ」
「何が、いいのさ・・」
 窓の外に視線を見据えたまま、佐藤は何も答えない。ただ、白い肌が、ほんのり赤く染まる。その有様に、俺の鼓動が高鳴りを覚えた。
「ところで、金ちゃんは何歳なの?」
「え、俺の? うん、二十二歳になったばかりだよ」
「あら、私より若いのね。年上かと思った」
「え~、佐藤さんの方が、俺より二つぐらい若いと思ったよ」
「まあ、嬉しい。でも、私の方がオバサンなのね。残念だわ」
 二人は顔を見合わせると、笑い出した。別の席に座る坂本たちが、怪訝な顔してこちらを見る。
「どないしたん? 何がそんなにおもろいねん?」
「いや、何もあれへんって。こちらを見たらアカンって」
 坂本が、俺の関西弁に唖然とする。
「おい、金ちゃんのけったいな言葉、しんどいわ」
「こっちだって、慣れない言葉にしんどいよ。あっはは・・」
 俺が笑い出したので、四人は笑いが止まらない。食事が運ばれて来たので、笑いは治まった。
 食事が終わり、寮に戻る。坂本が、別れ際に次のデートを約束した。
「金ちゃん、来週は新宿へ行かへんか?」
「来週に新宿?」
 予定は無いが、返事に戸惑う。ましてや、新宿には辛い思い出が残る場所だ。
「かめへんやろ。ええよな?」

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