ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   偽りの恋 Ⅲ 

 夕食が終わっても、誰一人席を外す者はいなかった。この機会に、ぎこちない態度や話し方も薄れ、全員が打ち解ける。歳の差や境遇も関係ない寮の仲間になった。
 ただ、それぞれの過去や価値観に対し、決して侵害しない暗黙の了解を俺は感じた。
《海外に生活を求めるには、それなりに理由が有るはずだ。その点、俺は逃避かもしれんな。海外に志を目指す? そんなかっこいいことじゃない。俺のことは、口が裂けても話せない内容だ》
 どうにか一ヶ月が過ぎ、ゴールデン・ウイークの連休に入る。近県出身の仲間は地元に帰るが、それ以外は寮で過ごした。俺は悩んでいた。
《どうする? でもな、会うこともできない。会っても苦しいだけだ》
「よう! 深刻な顔して、どうしたんや?」
 大阪出身の坂本が、部屋の入口から声を掛けた。
「うん、帰ろうか悩んでいた」
「なんや、悩むこと無いやんけ。どうや、俺に付き合えや」
 坂本は気さくに俺を誘う。
「えっ、どこへ?」
「あ~、近くに菓子工場の女子寮があるやろう。そこの子とデートや」
 女子寮の子を誘ったら、相手が二人で来るらしい。それで、俺に声を掛けたという。
「ああ、いいよ。どうせ暇だから・・」
「そうか、おおきに。じゃ、三十分後に玄関やでぇ・・」
 坂本は俺の肩を叩き、自分の部屋に戻った。
《まあ、気晴らしに、いいかな。でも、どこへ行くんだろう》
 三十分後に玄関へ行くと、既に二人の女の子が待っていた。二人は軽く頭を下げ、挨拶をした。
「こんにちは・・」
 俺も、挨拶を返した。

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