謂れ無き存在 ⅦⅩ
そこへ明恵母さんとオヤジさんがやって来た。
「初めまして、真美の母です。それに父です」
「まあ、本当に? メッチェンは幸せになったのね」
「はい、私たちもです」
先生夫婦と母さんたちは、意気投合したようだ。俺は真美に呼ばれ、トーマス小父さんと三人で話し合う。
「洸輝、明日はママのお墓に行くけど、そこで結婚式をしたいの」
「え、結婚式?」
「そうよ、嫌なの?」
俺は驚いたが、彼女の望むことなら反対はしない。
「賛成だ! 素晴らしいことだと思うよ」
「やっぱり、マイ ダーリン、 アイ ドウ ラブ ユウ!」
彼女は、俺の首に腕を回し抱きついた。頬を、鼻を、額を、そして、口にキッスを繰り返す。
「コウキ、アイ ザ セイム トウ ユウ!」
大きな体のトーマス小父さんが涙を流し、俺を抱きしめ頬にキッスをする。
「真美! 小父さんは、俺に何を言ったんだ」
「それはね、私と同じに洸輝を愛しているって、言ったのよ」
理解した俺は、トーマス小父さんをハグした。彼は、再び俺を抱きしめる。真美の友達も集まり、俺はハグを繰り返す。
初めて訪れた国、真美の育った町。不安だった俺は、幸せを感じることができた。
《いつもすれ違い、掴めなかった幸せがここにある。真美と偶然に会い、真美に引き寄せられ幸せだ》
真美が体を摺り寄せ、小声で呟いた。
「偶然ではないの。それに、私が洸輝に引き寄せられたのよ。ダーリン・・」
彼女の瞳は、俺の軽い脳をノックアウト。俺の体は武者震いを起こす。
楽しい食事会は終わり、再会を約束して解散した。俺と真美は、明恵母さんとオヤジさんを階上のティー・ラウンジに誘う。お茶を飲みながら、明日の結婚式のことを伝える。
「私は、二人のために日本でやる予定でいた。うん、これも悪くはない話だ。明恵、そうだろう?」
「ええ、いいアイデアね。真美のお母さんが、喜ぶと思うわ」
「ありがとう、お母さん。お父さんもね」
「いいのよ。メッチェンが喜ぶなら・・」
明恵母さんが、真美の英語名を使ったので、全員が楽しく笑った。
話を終え、それぞれの部屋に戻る。