ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   謂れ無き存在 ⅦⅩⅠ

 部屋に戻った二人、食事会の高揚が続いていた。真美が英語を交えて喋り、俺の軽い脳は沈黙。ただ、理解できる範囲で、頷くしかなかった。
「どうしたの? 黙ったままで・・」
「いいや、聞いているだけで、十分だよ」
「あ~、分かった。他のことを、考えているのね」
「いいや、何も考えていないよ」
「いいえ、考えているわ。これからの事でしょう?」
「はあ? これからの事・・。これから、どこへ行くんだい?」
 真美がスカートの端を摘んで、妖艶な仕草を見せる。
「ふふ・・、ワッツ ドゥ ユウ ウォント ミ トゥ ドゥ?」
 その様子を理解し、俺はゴクリと唾を飲み込んだ。
「イェッサー、マイ メッチェン!」
 二人はシャワーを浴びた後、ゆっくりと愛を確かめ合った。
 いつの間にか眠っていた俺は、体を揺すられて目を覚ます。
「うん? どうした、真美?」
 ホテルの外から、長く鳴り続けている踏切の信号音が聞こえた。
「ほら、窓から外を見てよ」
 俺が外を覗くと、ゆったりと走る貨物列車が目に入った。変哲もない貨物列車だ。
「特に、変わっていないよ・・」
「良く見てて、その内に分かるから・・」
 俺は、しばらく眺めていた。
「えっ、いつまで続くんだ、この列車は?」
 異常に気付いた俺は、振り向いて真美の顔を見る。彼女は、ぐっすり寝ていた。
《本当だ。これは珍しい光景だ。既に十五分は過ぎている。今更、数えても意味が無いけど、数えてみるか》
 暫く数えていたが、反対方向からもやって来る。途中で諦めた。
 翌朝、階上のレストランで朝食をする。オヤジさんたちもやって来た。
「いや~、驚いた。洸輝君は、夜の貨物列車を見たかね?」
「ええ、見ていました。驚きです。数えていましたが、諦めましたよ」
「そうさ、私も数えてしまった」
 その話に、真美が説明をしてくれた。

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