湖畔 (大河内晋介シリーズ第五弾)Ⅳ
料理に堪能し、互いに意見を交換する。しばらくして別れた。
《今からでも、遅くは無いだろう。よし、道祖神へ寄ってみるか》
駅前に出ると、家とは反対方向へ向かう。半時ほど歩くと、例の道祖神を見つける。
《これかな?》
後ろ側を覗くが、痕跡は見当たらない。
《おかしいな・・。この道祖神で間違いないと思うが・・》
人通りが少なく、気持ちが落ち着けない。考え倦んだ末に、帰宅することにした。
「晋介さん・・。ちょっと、お待ちになって!」
帰りかけた私に、御堂から呼び止められた。
「あ~、御堂さん。会えて良かったぁ」
「そろそろ、お越しになると思っていましたわ」
端正な身なりの御堂に心が高鳴る。
「その節は、お世話になりました」
「いいえ、お役に立て嬉しく思います」
「ところで、調べて・・」
私が言いかけると、止められた。
「分かっております。北軽井沢の件でしょう」
「えっ、どうして、ご存じなのですか?」
驚くことに、私の尋ねる内容を知っていたのだ。
「だって、私の連絡網は道祖神よ」
御堂の説明では、道祖神の石碑が島根を除く全国に所在する。特に、長野県の安曇野や群馬県の倉渕は、数の多さで有名であった。
「だから、北軽井沢の噂は聞いております。それに、福沢准教授の指示で、懸命に情報収集されていることも・・」
「そうですか。説明する必要も無い訳ですね。残念なことだ・・」
「いいえ、状況によっては、情報を交換する必要があります」
意気消沈する私に、彼女の言葉が私の心を高揚させた。
「では、一緒に活動ができるのですね? 良かったぁ~。ん? むしろ、私より福沢先生の方が大喜びでしょうね」