湖畔 (大河内晋介シリーズ第五弾)Ⅱ
「それで、どんな内容なんだね」
畠山が首を傾げ、説明に窮している。
「教授、私が聞いた噂では、夜になると湖面が光るらしいの。それも、ただ光るのではなく、湖底が割れてマグマが噴き出す明るさ」
「それなら、ガスが噴き出すだろう?」
明菜の説明に、福沢が疑問を投げかける。
「ええ、そうなのよねぇ・・」
「僕が聞いた話は、朝になると奇妙な足跡が残っていた。それも、何か所にですよ・・」
福沢が目を閉じ、瞑想する。
「それも、あの邪鬼と同じ足跡の様です」
そのとき、渡瀬が入って来た。
「先輩、五階の方が暑かった。日差しがガンガンと部屋を照らして・・。アッ!」
落ち着きのない声で、喋り捲る。たが、空気を読み取り、口を塞ぐ。
「分かればいいんだ。この部屋の方が、我慢できるだろう?」
「はい・・」
福沢が、徐に目を開く。
「よし、調査開始だ」
「大河内さんに、連絡しなくても宜しいのでしょうか?」
「うん、そうだな・・。後で、私から連絡するよ」
その後、助手全員を集め、早々に資料の収集を指示する。
「教授、私たちの研究室は、歴史学から魑魅魍魎学に変更ですね」
畠山が面白そうに話す。
「えっ、魑魅魍魎って、なんですか?」
「渡瀬、魑魅は山中の怪物のこと。魍魎は水中の化け物だ」
「それを勉強するのですか?」
「あっはは・・、そうだよ。とても興味がある学問だ」
他のメンバーも大笑い。明菜が笑いを堪え、渡瀬の背中を叩く。
「なによ、その顔・・。あはは・・」
「そうよ。ゲ、ゲ、の鬼太郎の世界よ。フフ・・」
驚く渡瀬に、同期の美知恵が付け加えた。