微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)ⅡⅩⅨ
瞬く間もなく光が消え、静かな洞窟観音に戻った。私たちは、全ての観音像を拝顔し、表に出る。受付けで、ご朱印札を多めに購入し、駐車場の車へ引き上げた。
「皆さん、お疲れ様でした。事が楽に済み、無事で良かった。今日のことは、他言無用です。お願いしますね」
自販機で買った飲み物を配り、飲みながら私が挨拶した。助手たちは安堵の面持ちで、私の話を聞く。次に、福沢准教授が今回のあらましを説明する。
「それでは、東京へ帰りますが、車中で感想を述べてください」
「は~い・・」
若月が邪鬼に狙われた理由も話した。
「だから、邪鬼はこの世の者ではない。いつ現れ、どこで君たちに害を及ぼすか分からない」
「ええ、そうです。今回は軽く済んだと思ってください」
私も助言する。
その後、私と若月は本来の生活に戻る。若月の車は、廃車登録し処分した。
二週間後の雨の夜。帰宅後シャワーを浴び、疲れたので直ぐベッドに横たわる。
「もしもし、大河内さん・・」
まどろむ私の耳へ、静かな雨の音と共に御堂の声がささめいた。
「権助は、地獄の釜茹での刑に処され、地獄の最下位へ追いやられました。もう二度と惑わすことは無いでしょう」