微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)ⅡⅩⅠ
私と福沢が、非常に危険な戦いとなるので、参加を止めるよう助手たちに説明した。
「いいえ、僕たちも行きます。先生のお役に立ち、僕たちの経験にもなる」
リーダーの畠山が、代表で答える。他のメンバーも頷く。
「でも、女の子は危ない。ヤツらは、弱い人間から襲う」
「あら、私が弱い人間と思っているの? 冗談じゃないわ」
若月の言葉に、二人の女子が頬を膨らませ、彼を睨め付ける。
「いや、それだけじゃない。凄く醜い姿だ。見たら気分が悪くなるよ」
彼は慌てて言い訳を繕う。
「尚更、体験したいわ」
「そうよ。本物の邪鬼を見ておけば、三途の川を渡るとき怖がらなくて済むもの」
三人の会話に、部屋の全員が大笑い。
「分かった。君たちを連れて行く」
福沢が、助手全員に同意する。
「ただし、勝手な行動は認めない。こちらの指示に必ず従ってもらう。いいね!」
私が念を押す。
「ハ~イ、了解しました」
準備しておいた、守り札や香り袋を配る。
「ついでに、ヤツらと対面するときは、常に般若心経か念仏を唱えること」
「ハ~イ、分かりました」
「あっ、大事なことを忘れるところだった。邪鬼は赤い物が好きだ。それを身に着けないこと、それに鶏の血や豚の内臓を体に付着させてもダメだ。それが一番危険だからね」
助手たちは、自分の体を見回す。
「赤いボールペンでも・・」
「口紅は・・」
「ああ、もちろんダメだ。最善の対策を考えて欲しい」
大学のワゴン車一台で出発。関越高速道を走り、高崎へ向かう。
「サービスエリアに寄って、少し早いが昼食をしよう」
11時過ぎ、上里サービスエリアに到着。しばらく休憩する。私と福沢で、洞窟観音での対応を協議した。