ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物が、世界大会に参加する。笑い、涙、ロマンス、親子の絆の物語。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。心意を確かめるために、行方不明の彼を探す。そして、ハワイ島へ。
 忘れ水 幾星霜  偶然の出会いが必然なのか、憧れは恋へ。恋は愛へ。山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。ひょんな出会いからの交流。そして・・。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズの第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 雨宿りに続く大河内晋介シリーズの第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 怪奇な夢を見続ける主人公。夢に現れる和服姿の美しい女性。それは不思議な縁から始まるものであった。
 ア・ブルー・ティアズ 入院中の父子が生死の別れ際に触れ合う姿。その様子見た主人公が、自らの父に対する情念を考える。また、夜間の救急病院で起きる生と死のドラマ。

   偽りの恋 ⅡⅩⅤ 

 浅黄色の封筒から、丁寧に畳まれた便箋を取り出す。  俺はドキドキしながら広げた。優しい文字が、踊るように書かれている。 『ほんの僅かな間だったけど、あなたに会えて良かったわ。弟のような、彼氏のような。どちらでも構わない。身近に話せた男性は、あなたが最初で最期の人。ありがとう。  やりたいことが沢山あったわ。もちろん、外国旅行も行きたかった。でも、無理だった。死んだら、何もできないもの。残念だわ…

   偽りの恋 ⅡⅩⅣ 

 「彼女、あまり具合が良くないの。強い痛み止めの注射で、会話は無理かもしれない。でも、金本さんに会いたがっているわ。先生には内緒よ」  長谷川さんの病室のドアに、面会制限の札が掛けられている。看護師に促され、俺は静かに病室の中に入った。 「・・・」  しばらくの間、黙って長谷川さんの顔を見詰める。ベッド脇のモニター音だけが聞こえた。  俺の気配を感じたのか、長谷川さんが徐に目を開ける。 「やあ、…

   偽りの恋 ⅡⅩⅢ 

 俺は何を話すか、前もって考えていた。彼女の名前は長谷川。 「長谷川さんが好きなのは、旅行の話だよね」 「ええ、この状況では、どこへも行けないもの」 「じゃ、どこへ行きたい? 国内、外国のどっちがいいかな?」 「ん~、外国かな?」  やはり、思った通りだ。俺は南米の様子を話すことにした。ただ、俺も行ったことが無い。 「南米のインカ帝国を知っているよね。実は、行ったことがないけど、興味があるんだ」…

   偽りの恋 ⅡⅩⅡ 

 あの頃、俺は悩んでいた。  あの人か、夢か、どちらかを選択する必要があった。  中学の時、意識の中に外国生活への憧れが、突如湧き上がった。ただ、自分でも理由が分からない。  意識は、憧れから夢に変わる。その後、ずっと夢を追い求めてきた。  ひょんなことから、あの人に出会う。  それまでは、安易なときめきを恋と思っていた。だが、あの人には、かつて経験しない衝撃的な恋心を感じた。  恋は、日々深ま…

   偽りの恋 ⅡⅩⅠ 

 公園内のテラスのあるレストラン。木陰のテーブル席に座る。飲み物を注文するが、しばらく会話がない。互いに記憶を模索する感じだ。 「それで、今は何している?」  仕方なく、俺が先に口を開いた。 「ええ、特に変わったことは、ないわ」  遠くの景色に視線を置き、虚ろに答えた。あの人の視線の先を、俺も見る。 「そう・・か。・・・」  公園内に人の影が増え、ざわめき声が爽やかな風に運ばれて来る。 「ところ…

   偽りの恋 ⅡⅩ 

 日曜日の朝、佐藤さんが突然に訪ねて来た。俺は急いで玄関に行く。白い日傘をさした佐藤さんが、門の前に立っていた。 「おはよう、金ちゃん・・」 「やあ、おはよう。どうしたの?」 「突然に、ごめんね。今日、時間が有るかしら?」 「いや、約束が有って、これから東京に出掛けるんだ」  佐藤は、俺の返事に肩を落とす。 「そうなんだ・・。じゃ、ダメか・・」 「うん、ごめんな」 「金ちゃんのことだから、彼女と…

   偽りの恋 ⅩⅨ 

 その後、寮生活にも慣れ、平凡な日々が過ぎて行く。  七月の日曜日に、寮生のひとり山倉が結婚した。相手の実家がある田園調布の教会で、結婚式を挙げる。俺たち全員が参列。教会の結婚式は、初めての経験だった。  その夜、俺は夢を見た。教会で結婚式を挙げる俺がいる。聖壇の前に立ち、花嫁を待っていた。オルガンが鳴り響き、花嫁がバージンロードを厳かに歩いて来る。  神父に勧められ、花嫁のベールを持ち上げた。…

   偽りの恋 ⅩⅧ  

 そこへ、坂本が疲れた顔で帰って来た。 「坂本さん、お帰り・・」 「あれ、はよ戻ったかいな?」 「ええ、適当にぶらついて、帰ってきました」 「なんや、なにもせ~へんでか?」  坂本は呆れた顔をした。 「当たり前でしょう。ほな、坂本さんは、どないやねん?」 「アハハ・・、けったいな、大阪弁やな。金ちゃんは、ほんまにおもろいわ」  傍で聞いていた仲間も、一緒に笑い出した。 「じゃ、楽しかったんですか…

   偽りの恋 ⅩⅦ 

 自分では長く潜るつもりだったが、直ぐに息を切らして顔を出した。 「何やってんだ、金ちゃんは・・」  川島が立っていた。 「いやぁ~、川島さん。気持ちを吹っ切るために、潜ったけど・・」 「何を、吹っ切るつもりなんだ?」  川島が湯船の中に入って来た。彼は、俺と同じ群馬県出身。 「いや、そんなに深刻な問題じゃ、ないですけどね」 「そうか、誰でも悩みがあるからな」  二人の会話は、風呂場の中にくぐも…

   偽りの恋 ⅩⅥ 

 西日が傾き、辺りが薄暗くなってきた。 「もう、帰りましょうよ」 「うん、帰ろうか・・」  公園を離れ、地下鉄で新宿に出る。新宿駅は人の群れでごった返し、歩くのに苦労する。車内に並んで座れた。あまり話すことも無く、秦野駅に着いた。  駅から寮までぶらりと歩く。ほどよい距離だ。 「疲れたね。仕事に、影響しなければいいけど・・」 「ううん、平気よ。明日は、遅番だからゆっくりなの」 「そうか、じゃぁ良…