湖畔 (大河内晋介シリーズ第五弾)Ⅲ
その後、一週間が過ぎた。助手たちは、資料集めや情報収集に奔走している。
「あっ、先生。ご無沙汰です」
私が帰宅の準備をしていると、福沢准教授から電話が掛かって来た。会って話がしたいと言う。
「じゃぁ、これからでも・・」
新宿で待ち合わせをする。福沢が推奨する中華飯店へ行く。食事をしながら、福沢の話を聞いた。
「今、畠山君たちが情報を集めています」
しばらく何もなかったので、私も興味が湧いてきた。
「面白い話ですね。冥府との関連はなさそうですが、御堂さんに連絡してみます」
「お願いします。それにしても、御堂さんに会いたいですね・・」
「あれ、御堂さんに惚れたのですか?」
「ま、まさか・・。惚れるような存在じゃ、有りませんよ。でも、会うと妙に心が落ち着くんです」
「だって、紗理奈さんのご先祖でしょう。やはり、恋した人の面影があるから、仕方ないと思う。そうでしょう?」
福沢にとって、あの事件は忘れられない。
「まあ、そう言われれば・・。時折、思い出してしまう。辛いですね・・」
存在しない人との思い出に、私の心も痛む。
「不可能でしょうかね?」
不意に真剣な面持ちで、私の顔を覗く。
「えっ、何をですか・・」
「いや、御堂さんがこの世に現れる。と言うことは、彼女だってこの世に・・」
私は唖然とした。一度も思ったことが無いからだ。
「あ~、確かに考えられる話だ。でも、恐らく冥府の規律があって、困難でしょう」
機会があったら、尋ねてみようと思った。