ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

 微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)ⅩⅧ 

 私が若月を庇うように、ファミレスを出る。やはり、私たちを見張っていた邪鬼が、ゴソゴソと動き出した。 「相当数の邪鬼が、暗闇で動いている。若月、注意しろ!」  私が、若月に小声で耳打ちする。 「はい、主任」  私たちは雑木林の反対方向へ歩く。明るい商店街の中を、ゆっくり歩いた。その隙に、御堂が雑木林へ向かう。 「よし、上手く行きそうだ」  三人が同時に後ろへ振り向いた。ヤツラには、商店街の明かり…

 微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)ⅩⅦ 

 ただ、私は気になった。高崎の洞窟観音へ行かねば、会えなかったはずの千代さんに会え、この御堂が私たちの前に現れた。 「御堂さん、千代さんにしてもあなたにしても、どこから来られたのですか?」 「ああ、そのことね。前回の雑木林にある冥府の境界線よ」 「えっ、あそこは封鎖されたはず・・」  御堂が、小声で答える。 「だから、小さな道祖神を抜け穴に利用しているの。邪鬼に知られたら大変よ」 「そうか、納得…

 微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)ⅩⅥ 

「大河内さん、あなたは典侍に会われたでしょう? あの方がとても心配して、私をこの世に送り出したの」 「はい、昨晩話すことができました。でも、御堂さんのことは、何も触れませんでした」 「ええ、分かっています。あなたの家の近くに、邪鬼の群れが集まり、情報を手に入れようと必死だったの。だから、敢えて私の名前を伝えなかった・・」 「それでは、あなたは私たちの味方ですね?」  彼女は頷いた。私たち三人も、…

 微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)ⅩⅤ 

 考え倦んだ末、結局駅前のコンビニする。私と若月は、周りに気を配った。特に車内の人の動きを確認し、一駅ごとに車両を変更。  約束の駅前には、福沢が先に来て待っていた。 「早かったですね・・」 「ええ、その女性に興味が湧き、急いで来てしまいました」  福沢は照れながら、早口で答える。 「主任、間違いなく現れますかね?」  若月が落ち着きなく、そわそわと辺りを見回す。その動作に、危険を感じて叱る。 …

 微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)ⅩⅣ 

 昼時間に、若月が迎えに来た。一緒に食事するが、今夜の約束を話すべきか私は迷う。 「主任、箸が動かないですが、お腹が空いていないんですか?」 「ん? いや、考え事をしていたんだ」 「何をですか? 私に話せば、楽になりますよ」  若月らしいと思った。私は決心する。 「実はな、今朝のことだが・・」  有りのままに、説明した。名刺も見せる。 「そんな美しい女性で、千代さんに似ている。本当ですか?」  …

 微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)ⅩⅢ 

「もし、差し障りが無ければ、事情を教えて?」  物腰の柔らかな女性だ。年齢がほぼ私と同じくらい。妙に私を魅するので、心がときめいた。 「あ~、う~、・・」  私は戸惑い、言葉が思いつかない。 「これから、お仕事でしょう? 後で電話を頂けますか・・」  小物入れから名刺を出し、私に寄越した。私も名刺入れから抜き、急ぎ手渡す。 「大河内 晋介さん・・ね。じゃ、宜しく・・」  涼しい瞳の視線を受けた。…

 微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)ⅩⅦ

 私は忘れないように、教えられた番号をメモする。 《しかし、驚いたなぁ。千代さんが現れるなんて・・》  朝までまどろみ、すっきりしないで起床した。熱いシャワーを浴び、眠気覚ましの強いコーヒーを飲んだ。朝食を済ませると、急ぎ駅に向かう。 「なんだろう?」  歩く私に、後ろから強い視線を感じる。振り向くが、通勤の人たちだけ。仕方なく、駅前のコンビニに寄る。棚の陰から外を眺めた。男女の怪しい若者が、中…

 微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)ⅩⅥ 

 食後、それぞれの課題を持って別れた。別れ際に、挑発だけは受けるなと、若月に忠告をする。家に帰ってからも、心配した。シャワーを浴びてから、電話を掛ける。 「はい、若月ですが・・」 「ああ、私だけど。問題無いか?」 「特に、今のところは何もありません」  しばらくして、福沢から電話を受ける。 「やはり、私も狙われているようですね」 「えっ、そんな兆候がありましたか?」 「はい、家の書棚が荒らされて…

 微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)ⅩⅤ 

「ええ、主任。私も、おやっと思いました」  注文した料理が来る前に、飲み物で乾杯。若月が、気持ち良さそうにビールを飲む。福沢は赤ワインを、味わいながら飲んだ。私は相変わらずコカ・コーラで済ませる。 「ところで、高崎の洞窟観音は、いかがでしたか?」  福沢が、カバンからパンフレットを取り出す。 「これです。いや~、見事な場所でした」  私と若月が、見せられたパンフレットを覗き込む。内容を読んだ私は…

 微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)ⅩⅣ

「確かにそうですね。ヤツらの姿が見えれば、襲われても逃げられる。また、反撃できますからね」  若月は、若いし気力もある。しかし、邪鬼の本当の怖さを知らない。私は不安を覚え、彼の向う見ずな行動を注意するつもりでいた。  私たちは、気付いていない素振りを続けた。ヤツは面白がっている。 「若月、ドアが閉まる寸前に降りるぞ。いいな・・」  私は前を見据えたまま、彼に伝えた。 「はい、主任・・」  新宿駅…