ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

 微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)Ⅹ

 その資料は、江戸の中期に書かれたようだ。筆文字なので、結構時間を要した。
「この部分が、気になりますね」
 私が、指で示す。福沢も首を傾げる。
「確かに・・」
「え、なんですか?」
 若月が、覗き込む。
「洞窟でしょう。その洞窟に、仏像が安置されている場所ですかね?」
「そんな場所が、この近くに有るだろうか・・」
 三人は思い思いに、考え込む。
 洞窟の仏像が、向こうの世界へ導くという。但し書きには、必ず体にご朱印を貼るようにと指示。
 若月がタブレットで調べる。
「あっ、群馬県の高崎に、洞窟観音が有ります」
 私は半信半疑で画面を覗いた。
「本当だ。詳しく調べてくれ・・」
「はい、・・・」
 若月がタブレット画面を見続ける。その間に、私と福沢が資料の内容を確かめた。
「主任、洞窟観音の詳細が判明しました」
「そうか、じゃぁ教えてくれ」
 高崎の洞窟観音は、故山田徳蔵翁が大正から約半世紀の歳月で人力で掘られたもの。約400mの奥行に36体の観音像が安置されている。その後、徳明園が作られ、財団が管理しているようだ。
 若月が説明する。私と福沢が興味を持った。
「これは、可能性がある」
 福沢が喜び、明日中に視察するという。私と若月は仕事のため、行けなかった。
「あ~ぁ、行きたかったな・・」
「仕方がないだろ。月曜日じゃなければ、私だって行きたかった」
 福沢は、資料を置いて帰った。私と若月は夜遅くまで、その資料を読みふける。

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