ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

 微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)ⅩⅠ

 帰りが遅くなった若月。心細い態度で、帰り支度を始める。
「おい、若月よ。今晩、泊まれ・・」
「いいえ、着替えを持って来ていないので・・」
 私は、しばらく考えた末、結論を出す。
「じゃ、私が行くよ。泊まる部屋は有るのか?」
「ん~、ソファなら・・」
 明日の着替えを用意し、彼の車で千葉へ向かった。私は出掛ける前に、車内を清める。時折、オフのラジオから雑音が流れた。しかし、声は流れず私は安堵する。
「主任、本当に手段が見つかりますかね?」
「・・・」
「主任、聞いていますか?」
 彼は恐れているのであろう。執拗に尋ねる。
「ああ、聞いているよ」
 私は嫌な空気を感じていた。手帳を取り出し、話せない内容を書く。信号待ちの時、彼に読ませる。
「えっ?」
「シッ!」
 口に指を立て、喋らせない。彼は咄嗟に口を噤む。
【奴らは、車のスピーカーから、こちらの様子を窺っているようだ。余計なことを話すな】
 若月は目を合わせ、頷く。
「明日は、良い天気になりますかね?」
 若月の機転に、私は笑いを堪える。
「そうだな、雨は降らないだろう」
 私の相槌に、彼もほくそ笑む。
 一瞬、車が横揺れをした。恐らく、こちらの対応を察したのであろう。苛立ちに車を揺らした。

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