微雨のささめき(大河内晋介シリーズ第四弾)Ⅸ
昼時間になっていたので、近くのラーメン店に餃子セットを三人分頼んだ。都合よく、福沢准教授が到着した。
「先生、昼は?」
「いや、まだ食べていません」
先に頼んだことを伝えると、福沢が満面の笑顔。若月を紹介し、お茶を用意してると出前の餃子セットが届いた。
「さあ、食べながら考えましょうか・・」
すき腹の若月が、勢いよく食べ始める。私は、食べながら話題を口にした。
「今回は、やや面倒だと思います」
「えっ、どうしてですか?」
餃子を一切れ摘み、食べようとした福沢が首を傾げる。
「向こうの人が、誰も係わっていない。邪鬼が、怨念で勝手に動いている・・」
「主任、私たちだけで邪鬼と・・」
「ああ、そうだ。だから、困っているんだ。対処方法がまったく見当がつかない」
「そのようですね。それで、ここへ来る前に、ざっと調べて関係資料を持参しました。役に立てばと思って・・」
福沢がバックから資料を取り出す。三人は急いで食べた。
「なんだか、ワクワクしますね?」
「おいおい、若月。何を考えているんだ、狙われているのは、君だぞ」
「あ~、そうだった。用心しなければ・・」
怖々と周りを見渡す。その仕草に、私と福沢が大笑い。三人はお茶を飲みながら、其々が資料に目を通す。
「今、不意に思いついたんですが、向こうの人に連絡が取れますかね?」
若月が突拍子もない案を言い出した。
「ええ、私も同じことを考えた」
福沢が賛成する。
「果たして、そんなことが可能だろうか?」
私は真意を疑う。福沢が、目の前の資料を見せる。
「ここに、可能性が書いてありますよ」
確かに書いてあるが、ページの下に但し書きが記されていた。