偽りの恋 ⅤⅩⅣ
「そ、それ、それは困るよ。夢を求めると、俺は誓ったんだ」
「誰に誓ったの?」
「う~、誰にって、神様だよ」
意味難解な言葉に、千恵は呆れた顔で見る。
「そんな神様なんて、いないわ。本当に嘘が下手ね。ふふ・・」
俺も、自分の言い訳に呆れていた。
「うん、俺は下手くそだ」
「でしょう? 金ちゃんは優しすぎるのよ」
千恵がわざとらしく、足を組み替えた。その動作に俺の目が向く。
「い、いや俺は優しくない。相手の心を踏みにじっているよ」
「確かにそうね。金ちゃんは、私の気持ちをめちゃめちゃにしている」
「え~、俺は何もしていないよ」
また、組み替える。俺の目が、その動作を勝手に追いかける。再び組み替えた。
「ほら、私の足が気になるでしょう?」
「そりゃあ、そうさ。俺の目の前で、わざとらしく足を組み替えるからだよ」
千恵との会話は、予想外の言葉が俺を追い詰める。
「そんなに顔を赤らめて、慌てること無いでしょう。金ちゃんは、面白いわ」
「もう、いいだろう。さあ、着替えて行こう」
俺は状況を脱することにした。
「うん、でも、シャワーを浴びたいわ」
またまた、俺の脳を刺激する。
「その廊下の奥に、簡単なシャワー室が有るから、早く浴びなよ」
「分かった。奥が暗くて怖いから、外で見張ってね・・」
もう、いい加減にして欲しい。脳も心臓もガタガタに崩れて行く。