ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   偽りの恋 ⅤⅩⅤ 

 曇りガラスの戸が閉まる。衣擦れの音が、外で待つ俺の耳に聞こえてきた。俺は気まずさに、後ろへ振り向く。壁に寄りかかり、目を閉じ黙想する。
「金ちゃん! そこにいるの?」
「ああ、居るから心配しなくていいよ・・」
 不意に、ガラス戸が開き、俺の心臓がドカンと撥ねる。見る必要の無い後ろを、顧みてしまった。柔肌の腕が差し出され、宙を舞う。
「タオルが無いわ。貸してちょうだい」
「わ、分かった。い、今、も、持って来るから・・」
 俺は慌てふためき、バスタオルを取りに行く。整理ダンスから真新しいバスタオルを取り出し、急ぎ廊下に戻る。
 曇りガラス戸に目が奪われ、俺は一瞬立ち止まった。目の当たりに、全裸の千恵がガラス越しに映し出されている。俺の全神経が凍りついた。
「まだなの、金ちゃん。早くしてよ!」
 千恵の声に、我に返る。恐る恐る、ガラス戸に近づく。
「は、はい、バスタオルだよ・・」
 差し出された腕に、タオルを預けた。
「あっ、ありがとう」
 俺はその場で振り返り、事務所の方へ目を置く。目を閉じれば、千恵の裸体が瞼の裏に焼き付いていた。俺の脳は深いため息を吐かせる。俺は不幸な男だと思った。
「あ~、さっぱりしたわ。ありがとう・・」
 俺は振り向かず、生返事を返す。
「うん、いや、構わんよ・・」
 俺は自分の部屋に戻る。ただ、後ろにいる千恵の気配を感じていた。
「あ~ぁ、フ~ゥ・・」
 訳の分からぬため息が続く。吐きながら、勉強机の椅子に腰かける。
「金ちゃん・・」
 天を仰ぐ俺に、艶めかしい声で呼びかけた。
「うん、なんだい?」
 タオル姿の千恵を、間近に見てしまった。俺はやばいと思い、目を閉じる。
「ジャジャ~ン」
 だが、遅かった。パッとタオルを外したのである。
 

×

非ログインユーザーとして返信する

あと 2000文字

※は必須項目です。