ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   偽りの恋 ⅣⅩⅥ 

 佐藤は、一瞬言葉を選ぶために、沈黙する。俺は焦ることなく待った。
「ん~、千恵ちゃんを悲しませないで、彼女は、まだ18歳よ」
 俺には、佐藤の気持ちが分かっていた。
「もちろんさ。あの旅行のとき、彼女の仕草や言葉で感じた。でも、ときめきを意識しても、心の奥に戒めていた」
「・・・」
「だから、新たな恋は決してない。それに、彼女を弄ぶつもりもない」
 佐藤が俺の目を捕まえ、本心を確認する。
「分かった。金ちゃんを信じるわ」
「実際に、俺の夢を阻害する恋が、嫌なんだ」
 俺の言葉に反応し、厳しい眼差しを向けた。
「あら、私が金ちゃんの夢を阻害したわけ?」
 俺は佐藤の眼差しと強い言葉に、一瞬たじろぐ。
「・・・」
 言葉を失った俺に、追い打ちをかける。
「そうなのね? 私と会うとき、金ちゃんの心がいつも見えなかった。やっと、理解できたわ。最初から嫌いだったのね、私のことを・・」
 俺は焦った。
「そ、それは誤解だ。好き嫌いの問題じゃない」
「あ~、年上のオバサンだからでしょう?」
 もう、感情が拗れ、何を言っても悪く捉えるようだ。
「佐藤さん、冷静になろうよ。俺の話し方が悪かった。謝るよ、ごめん」
「・・・」
 俺は恋が下手なんだと思った。あの人に対しても、自分だけを優先して相手の心を傷つけてしまう。
「俺はね。女性の心を理解するフェミニストじゃ無いんだ。恋する価値が無い男だと思うよ」
「ふふ・・・、面白いことを言うわ」
「何が、可笑しいのさ。本当のことを白状しただけだ」
 今度は、俺がムッとなり、冷静を欠いた。
「いいえ、金ちゃんは恋に薄情ではないわ。女性の気持ちが分かり過ぎるの。本当のフェミニストよ。ふふ・・・」

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