ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   偽りの恋 ⅣⅩⅦ 

 いや、俺は違うと信じていた。どれほど多くの女性に、心が奪われただろうか。彼女らの心が読めず、失意のどん底を味わう日々を過ごした。
「まあ、いいや。惨めな情けないことを、思い出しても仕方ない」
「ふふ・・、あら、そんなに恋をしたの。幸せね」
「えっ、俺が幸せだって?」
 俺の手を握り、恨めしい眼差しを見せる。
「そうよ。私なんて、この年まで経験しなかった。最初から諦めていたもん」
「諦めるなんて、可笑しいよ。佐藤さんほどの女性が・・」
 彼女なら、誰からも好かれる容姿だ。情も持ち合わせている。
「あら、何が言いたいの?」
「佐藤さんは色白で美人だ。必ず恋する男性が現れると思うよ」
「それは、金ちゃんのこと?」
 夜道でもきめ細かな白い肌が、赤く染まるのが見えた。一瞬、俺の腰が引ける。
「ごめん、悪いけど俺じゃないよ」
「まあ、つれない仕打ちね。憎たらしい言葉・・」
 俺がまごつくほど、妖艶な仕草で見詰める。冷や汗が出て来た。
「わ、悪気があって、言っていないよ。別れることが分かっていながら、恋なんてできないからさ・・」
「うふふ・・、分かっているわよ。ふふ・・」
 佐藤は笑っているが、本心で笑っていない。不憫を感じた。俺の我が儘な欲望が疼く。握られている手を、握り返そうとした。
「金ちゃん! 誰かがこっちに来るわ」
 驚きと共に、俺の我が儘な欲望が萎える。二人は無意識に離れた。
「あっ、金ちゃんやないけ。何してんねん?」
「お、坂本さん!」
「あら、幸子ちゃんも一緒なの?」
 坂本の後ろに隠れ、幸子が恥ずかしそうに俯いていた。
「話が済んだから、俺はもう寮へ帰るところさ・・」
「そうよ、私も帰るわ。幸子ちゃん、一緒に帰ろうよ」
 気まずい風が吹く。
 

×

非ログインユーザーとして返信する

あと 2000文字

※は必須項目です。