ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   偽りの恋 ⅣⅩ 

 一時間ほど海岸で戯れた後、適当なレストランを探した。ちょっと小高い丘に、洒落たレストランを見つける。
「じゃあ、それぞれが適当に食べてくれ。いいね・・」
 木村が伝えると、テラスのテーブルへ移動する。直ぐに食券を買いに行くグループもいれば、近くの土産店へ覗きに行くグループもいる。
 俺は海岸が一望できるテラスの端に行く。海面がキラキラと輝き眩しい。目を細め眺めながら、一服する。
「なんだ、ここにいたんだ」
 千恵がコーラの瓶を持って、横に立った。
「はい、これ飲んで・・」
 俺は一瞬戸惑う。
「あ、俺に?」
「もちろんよ。私のじゃ、気に入らない? それとも、気が咎めるの?」
 小さな可愛い顔が拗ねた。俺の顔をジッと覗き見る。
「いいや、ありがたく飲むよ。サンキュウ!」
 受け取り、直ぐに飲んだ。結構冷えている。
「うわ~、冷てぇ~。胃の中が、ギンギンに凍っちゃうよ」
 俺の大げさな格好に、目を丸くして驚く。だが、直ぐに笑い出した。
「もう、なんて声を出すの。驚いたわ。ふふ・・、アハハ・・」
 笑いが止まらず、俺の腕を幾度も叩く。
「だって、金ちゃんの顔が・・、あはは・・、可笑しくて・・、フフ・・」
「千恵ちゃん、食事が来て、みんなが待っているよ」
「あ~、秋ちゃん。うん、直ぐに行くわ。ウフフ・・」
 横目でテーブルを見ると、不機嫌な竹沢の顔があった。
「さあさあ、早くテーブルへ行きな。また、妬まれたら大変だ」
 千恵の肩を叩き、追いやった。
「もう、行くわよ。金ちゃんなんか、大っ嫌い!」
「あはは・・、そうか、良かった」
 俺の言葉に、反応した千恵。
「あら、そうなの? じゃ、金ちゃんこと大好き。佐藤さんから奪っちゃうわ」
 そのまま、テーブルに戻って行く。俺は唖然とした。

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