偽りの恋 ⅣⅩ
一時間ほど海岸で戯れた後、適当なレストランを探した。ちょっと小高い丘に、洒落たレストランを見つける。
「じゃあ、それぞれが適当に食べてくれ。いいね・・」
木村が伝えると、テラスのテーブルへ移動する。直ぐに食券を買いに行くグループもいれば、近くの土産店へ覗きに行くグループもいる。
俺は海岸が一望できるテラスの端に行く。海面がキラキラと輝き眩しい。目を細め眺めながら、一服する。
「なんだ、ここにいたんだ」
千恵がコーラの瓶を持って、横に立った。
「はい、これ飲んで・・」
俺は一瞬戸惑う。
「あ、俺に?」
「もちろんよ。私のじゃ、気に入らない? それとも、気が咎めるの?」
小さな可愛い顔が拗ねた。俺の顔をジッと覗き見る。
「いいや、ありがたく飲むよ。サンキュウ!」
受け取り、直ぐに飲んだ。結構冷えている。
「うわ~、冷てぇ~。胃の中が、ギンギンに凍っちゃうよ」
俺の大げさな格好に、目を丸くして驚く。だが、直ぐに笑い出した。
「もう、なんて声を出すの。驚いたわ。ふふ・・、アハハ・・」
笑いが止まらず、俺の腕を幾度も叩く。
「だって、金ちゃんの顔が・・、あはは・・、可笑しくて・・、フフ・・」
「千恵ちゃん、食事が来て、みんなが待っているよ」
「あ~、秋ちゃん。うん、直ぐに行くわ。ウフフ・・」
横目でテーブルを見ると、不機嫌な竹沢の顔があった。
「さあさあ、早くテーブルへ行きな。また、妬まれたら大変だ」
千恵の肩を叩き、追いやった。
「もう、行くわよ。金ちゃんなんか、大っ嫌い!」
「あはは・・、そうか、良かった」
俺の言葉に、反応した千恵。
「あら、そうなの? じゃ、金ちゃんこと大好き。佐藤さんから奪っちゃうわ」
そのまま、テーブルに戻って行く。俺は唖然とした。