ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   偽りの恋 ⅢⅩⅨ 

「随分、簡単に諦めたね」
「反対されるのは分かっていたので、相手のご両親に直接結婚を申し込んだ」
「えっ、大胆なことをやったね。それじゃ、彼女が可哀そうと思わなかったのか?」
「う~ん。もちろん、卑怯なことだと思っています」
 思い出すと、心が煮えたぎるほど辛い。最愛の人に、意味の無い過酷な仕打ち。自分の愚かさに嘆いた日々。
「俺はできなかった。だから、いつまでも苦しみを引きずっている」
「海田さんも、ですか?」
「ああ、そうだ。俺の場合、オヤジが会社を継げって言っているんだ」
 彼は俺に話すのではなく、自分の気持ちを吐き出すように語った。
 会社を継ぐために気持ちを整理したが、やはり、外国生活の憧れが捨てられない。諦めるために、好きな女性と婚約した。
「でもな、例え数年でもいいから、住めばって彼女に言われた」
「・・・」
「俺は決心した。先に俺が行き、後から彼女を呼び寄せる」
「良かったですね。俺は、あの人を不幸にさせると思い、断ち切ったつもりです」
「そうか、断ち切れていないだろう?」
「ふふ・・、お見通しですか? でも、諦めるしかないんです」
「ただ、まだ問題があるんさ。オヤジの会社だ。俺意外に後継ぎがいない。だから、妹の旦那を説得しているんだ」
 そこへ、木村が二人のために飲み物を運んで来た。
「あっ、すみません。頂きます」
「いや、いいよ。どうせ、二人には相方がいないから・・、ごゆっくり」
「なんですか、嫌味ですか?」
 木村は、海田の顔色を窺って、そそくさと行ってしまった。
「俺に気遣う必要も無いのに、どうしてなんだ」
「いや、俺だって気を使いますよ。何故だか、分かりませんけど・・」
「あはは・・、金ちゃんもか? それは不思議だ。ハハ・・」
「うふふ・・、はは・・、もちろんです。ハハ・・」
 二人は眩しい日差しの空を眺め、大きな声で笑った。
「やあ、金ちゃん! 久しぶりに気持ち良く笑えたよ」


×

非ログインユーザーとして返信する

あと 2000文字

※は必須項目です。