偽りの恋 ⅢⅩⅠ
仕方なく、本当のことを打ち明ける。
「実は、あの人とは・・」
「ううん、言わなくてもいいわ」
出鼻をくじかれる。俺は唖然とした。
「えっ、どうしてさ?」
「当たり前でしょう。金ちゃんの好きな人が、誰だって言いの。私には関係ないもの」
確かにそうだ。俺だって、人の恋話なんて聞きたくない。
「そうだよね。ごめん、ごめん」
「いいの、謝らなくて。ところで、夏休みに三浦半島へ行くこと、知っている?」
俺は初耳だった。
「俺は知らない。誰が、行くんだい?」
「ここの人たちと、うちの寮の女の子たちよ」
「うっそー、本当かい?」
「ええ、幸子ちゃんから聞いたわ。寮の談話室に、ポスターが貼ってある」
「え、どんな内容なの?」
佐藤さんの話では、参加費は無料。昼食代は、それぞれが負担するという。
「それで、応募者の人数が決まっているの。確か、ここの寮の人たちと同じ人数よ。応募が多数だったら、抽選だって・・」
俺はため息をつく。いつの間に、誰が計画したんだ。
「そうか、後で聞いてみるよ」
「私と幸子ちゃんは、参加できないわ」
「えっ、どうして?」
「だって、仕事が当番制だから、その日は仕事なの」
「それは、残念だ・・」
疑わしそうに、俺を見る。
「本当かな? 寮の若い子だったら、嬉しいくせに・・」
「いや、いや、そんなことはないよ」
俺の慌て振りに、佐藤さんが喜んで笑う。
「でも、楽しそうな計画ね? 若い子と仲良くなったら、許さないわよ」