ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   偽りの恋 ⅢⅩⅠ 

 仕方なく、本当のことを打ち明ける。
「実は、あの人とは・・」
「ううん、言わなくてもいいわ」
 出鼻をくじかれる。俺は唖然とした。
「えっ、どうしてさ?」
「当たり前でしょう。金ちゃんの好きな人が、誰だって言いの。私には関係ないもの」
 確かにそうだ。俺だって、人の恋話なんて聞きたくない。
「そうだよね。ごめん、ごめん」
「いいの、謝らなくて。ところで、夏休みに三浦半島へ行くこと、知っている?」
 俺は初耳だった。
「俺は知らない。誰が、行くんだい?」
「ここの人たちと、うちの寮の女の子たちよ」
「うっそー、本当かい?」
「ええ、幸子ちゃんから聞いたわ。寮の談話室に、ポスターが貼ってある」
「え、どんな内容なの?」
 佐藤さんの話では、参加費は無料。昼食代は、それぞれが負担するという。
「それで、応募者の人数が決まっているの。確か、ここの寮の人たちと同じ人数よ。応募が多数だったら、抽選だって・・」
 俺はため息をつく。いつの間に、誰が計画したんだ。
「そうか、後で聞いてみるよ」
「私と幸子ちゃんは、参加できないわ」
「えっ、どうして?」
「だって、仕事が当番制だから、その日は仕事なの」
「それは、残念だ・・」
 疑わしそうに、俺を見る。
「本当かな? 寮の若い子だったら、嬉しいくせに・・」
「いや、いや、そんなことはないよ」
 俺の慌て振りに、佐藤さんが喜んで笑う。
「でも、楽しそうな計画ね? 若い子と仲良くなったら、許さないわよ」

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