ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   偽りの恋 ⅢⅩ 

 情けない自分を恨めしく思う。心の奥に封印できない弱さを嘆く。ベッドから起き上がり、洗面室で顔をゴシゴシと洗った。幾分気が晴れ、再び食堂へ顔を出す。
「金ちゃん、ちょうどいいところに来た。ちょっと変わってくれ」
 木村の代わりに、俺が麻雀することになった。別に嫌いじゃなかったので、卓に座る。
「大丈夫か? あまり元気が無いけど・・」
 大山が気遣う。
「いや、平気です。久々に、別れた人と会ったので、少し落ち込んだだけです」
「そうか、それは残念だったね」
 俺は手の内を考えず、要らない牌を捨てる。
「それ、あたり~! ハイ、満貫ね」
 対面の須山が喜んだ。
「えっ、ウソ? あ~、俺何やってんだ」
 その後も、運が悪かった。この晩は、大負けに終わる。
「ああ、今日は大損だ。疲れたから、もう寝るよ」
 途中から戻って来た木村に、バトンタッチした。
「すまんな、金ちゃん!」
「別に・・、負けたのは、自分の所為ですから・・」
 部屋に戻り、倒れ込むようにベッドへ寝転がった。背伸びすると気持ちが良く、嫌な気分が消えるようだ。そのまま、朝まで寝ることができた。
 翌日の夕方、佐藤さんが訪ねてきた。門の前に手ごろな、段差があったので並んで座る。
「昨日は、どうだった?」
「え、何が?」
「デートよ。楽しかった?」
 俺の顔を盗み見る様に覗く。
「だから、デートじゃないよ」
「嘘言わないで。私、知っているもの」
「うっ、ゴホン・・」
 俺は、軽く咳ばらいをした。
「幸子ちゃんから聞いたわ」
「じゃ、坂本さんが喋ったのか?」
「ええ、そうよ。元気なく帰って来たそうね」
 彼女は、どこまで聞いているのか、考えてしまった。

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