ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   偽りの恋 ⅡⅩⅥ 

 あの人の了解を得ず、ご両親に結婚を申し出たのである。言うまでもない、後日、体良く断わられた。俺は後悔していなかった。
「どうして、先に言えなかったの?」
 あの人の視線は、怒りと悲しみ、それに憎しみと憐みが複雑に絡み合っている。
「ごめん、君との結婚は絶望的に思えた。君に言えば、君から否定の言葉を聞くことになる。それだけは、避けたかったんだ」
「そんな・・」
「そう、どちらにしても、君を傷つけることだ。卑劣な男だ、俺は・・」
「もし、私が受け入れると言ったら、どうするつもり?」
 その言葉は、俺にとって一番辛い質問だった。
「うん、君はイエースと肯定すると思っていた。だから、敢えてご両親に申し込んだ」
 あの人は、首を傾げて考えた。しばらくして、俺の顔を直視する。
「分からない。何故、敢えてなの? 私の何がいけないの?」
「いや、悪くなんかないさ。君に惚れた俺が悪い・・」
「なによ、それ・・」
 あの人は、別れの言葉も言わず、俺の前から立ち去った。
 あれから一年近くになる。今、あの人が一緒に紅茶を飲んでいる。変わらない姿で、目の前に座っている。
 時折、遠くに見える噴水を眺め、小さく吐息を吐く。俺は、その美しい横顔に見惚れ、同じく吐息を吐いた。
「辛いわ、こんな別れなんて。私が嫌いになるか、あなたが私を嫌いになるか、決めてくれない?」
 俺は答えられない。俺には、嫌いになる理由が見つからないからだ。
「できれば、俺を嫌いになって欲しい。君の幸せを考える。俺の人生では、君を不幸にするだけだ」
「じゃあ、何が、私の幸せで不幸なのかを、教えて頂だい?」
「・・・」
「どうされたの? 答えられないの?」

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