偽りの恋 ⅩⅧ
そこへ、坂本が疲れた顔で帰って来た。
「坂本さん、お帰り・・」
「あれ、はよ戻ったかいな?」
「ええ、適当にぶらついて、帰ってきました」
「なんや、なにもせ~へんでか?」
坂本は呆れた顔をした。
「当たり前でしょう。ほな、坂本さんは、どないやねん?」
「アハハ・・、けったいな、大阪弁やな。金ちゃんは、ほんまにおもろいわ」
傍で聞いていた仲間も、一緒に笑い出した。
「じゃ、楽しかったんですか?」
「いや、めちゃアカンわ。誘ったら、叩かれてしもうた。ほんま、しんどかった」
坂本は、肩を落とし部屋へ戻った。
「今の話は、なんだい?」
「俺も、興味津々だよ。何が、あったん?」
佐川と大島が、俺に質問する。俺は、デートを仕掛けた坂本の計画を、かいつまんで説明した。もちろん、俺の内容は伏せた。
「なんじゃそれは、大阪人らしい発想だな」
しばらく雑談をしてから、部屋に戻る。ベッドに横たわると、佐藤のことを考えてしまった。
《あまり深入りしては、佐藤さんが可哀そうだ。俺だって、戻れなくなる。人間の欲望って、怖いよな。理性を失ったら・・》
俺は、そのまま眠ってしまった。
浜辺の波打ち際、佐藤とデートをしていた。陽が燦々と照りつける。彼女の唇が、俺の心を弄ぶように誘う。甘い誘惑に負けた俺が、鮮やかな白い肌の肩を抱く。その瞬間、背後に人の気配を感じた。チラッと目を向ける。俺を見下ろす、あの人が立っていた。
けたたましい音に、パッと目が覚める。枕元の目覚まし時計の音だった。
《ふぅ~、なんて妙な夢を見たんだ》
直ぐに起き上がり洗面所へ行き、冷たい水で顔を洗った。