ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物が、世界大会に参加する。笑い、涙、ロマンス、親子の絆の物語。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。心意を確かめるために、行方不明の彼を探す。そして、ハワイ島へ。
 忘れ水 幾星霜  偶然の出会いが必然なのか、憧れは恋へ。恋は愛へ。山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。ひょんな出会いからの交流。そして・・。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズの第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 雨宿りに続く大河内晋介シリーズの第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 怪奇な夢を見続ける主人公。夢に現れる和服姿の美しい女性。それは不思議な縁から始まるものであった。
 ア・ブルー・ティアズ 入院中の父子が生死の別れ際に触れ合う姿。その様子見た主人公が、自らの父に対する情念を考える。また、夜間の救急病院で起きる生と死のドラマ。

   謂れ無き存在 ⅥⅩⅧ 

 至ってシンプルなロビー。受付けで一枚の用紙にサインをする。サイン以外は、真美が書き込んだ。俺の名前の横にハズバンドと書かれていた。受付けの女性から、握手を求められる。
「えっ?」
 俺は応じた。早口で何かを言われた。
「彼女、私の知り合いなの。結婚のお祝いを言ってるから、礼を答えれば・・」
 真美が説明する。俺は笑顔で、決まり文句で答えた。
「センキュウ、センキュウ」
 受付けが終わり、部屋に向かう。オヤジさんと俺が旅行ケースを運んだ。部屋は五階。
エレベーターを降り、明恵母さんたちは左側へ。オレ達は右側に進む。
 廊下の中ほどの部屋だった。真美がカード・キーを差し込み、ドアーを開ける。俺は二人のケースを中に運び入れた。
 二人同時に、大きな溜め息を吐いた。
「やっと、着いたわ。疲れたね」
「うん、疲れた・・」
 真美が近寄り体を寄せた。両腕を俺の首に巻き付ける。
「ここが、私の故郷。ここで育ったわ」
 唇を合わせる。俺は真美の背に手をやり、強く引き寄せた。しばらく抱擁を続けた後、旅装を解きクローゼットに衣類を収容する。
 真美がシャワーを浴びている間、俺は窓から外の様子を眺めていた。静かな街並みであった。車の通行も少なく、住み易そうな町に見える。
《ここが、真美の育った町なのか。どんなことを考え、何をしていたのか。確か、辛い思い出の町でもある》
 目の前に、線路が見える。
《ああ、電車が走るんだ。どんな電車だろうか》
「驚くと思うわ。ふふ・・」
 バス・タオル姿の真美が声を掛けた。洗い髪に乾いたタオルを巻く真美は、何かをイメージして笑う。
「何が驚きなんだい? 電車がユニークなのかな・・」
 真美が窓辺の俺に近づき、外を眺める。
「昼間は、普通の電車よ。だけど、夜間が凄いの。その時になれば、分かるわ」
 俺の軽い脳は、真美のボディ・ソープの香りに悩まされ、電車のイメージが湧かない。
 

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