ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   謂れ無き存在 ⅥⅩⅨ 

 着替えると、ホテルの外へ散策。
「本当に、静かで落ち着いた町だね」
 真美の案内で、図書館や市役所を見て回る。風が冷たく感じ、真美が体を寄せて来た。
彼女の温もりが伝わる。
「でもね、独りになったときは、この静けさが怖かったわ。特に、夜になると、寂しくて泣いて過ごしたの」
 真美の言葉に、小さな肩を強く引き寄せる。
「私が暮らした家は、この直ぐ先にあるわ。今は、誰かが住んでいると思う・・」
 その家の前にやって来た。オープンな庭の芝が枯れている。ガレージの前に、赤いワゴン車が停めてあった。
「あの二階の窓が、私の部屋だったわ。もう過ぎ去ったことね・・」
 真美はしばらく眺めていたが、未練をさっぱりと捨てる。
「さあ、帰りましょう」
 ホテルに戻ると、トーマス小父さんが待っていた。ホテルの階上にある、レストランで夕食をすることになった。
「明恵母さんに連絡するわ」
 皆が揃ったところで、食事を始める。静かな町の夜景が見え、明恵母さんが喜ぶ。
「素敵なレストランね。ねえ、あなた・・」
「そうだね。綺麗だ」
 そこへ、賑やかに数人の客が入って来た。真美が、信じられない顔で見る。
「うっそー、でしょう・・」
 彼女が席を立ち、急いで駆け寄る。順にハグを交わし始めた。時々、俺の方を見ながら、大げさな身振りのジェスチャーで会話をする。
「親しげに話しているけど、誰かしらね?」
「ええ、多分、友達でしょう」
 漸く、真美が紹介を始めた。年配の婦人は、真美に日本語を教えた先生とご主人。それに、幼馴染の人たちだった。
 紹介されたが、俺はうまく話せない。完全に落ち込んでしまった。その様子に、先生が声を掛けてくれた。
「あなたが、メッチェンのハズバンドね」
「あっ、はい。宜しくお願いします」
「優しいハズバンドで、良かったわ。日本で生活すると聞いて、とても心配していた」

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