ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   謂れ無き存在 ⅥⅩ 

 オヤジさんと俺が朝食をしてる間に、明恵母さんと真美が一緒に入浴。ふたりの笑い声が、浴室から響いてくる。俺とオヤジさんは、目を合わせ微笑む。
 高崎駅までは、オヤジさんの商用車で行くことになった。
 俺が旅行ケースを車に積み込んでいると、別人に見紛う真美が現れる。
《おっ! ワォ~、本当に真美なのか・・》
 長めの髪をきゅっと後ろに引き詰め、ポニーテールに鮮やかなグリーンのバンドで束ねた真美。薄化粧の小さな幼顔が、妙齢の女性へと変貌をとげていた。
 俺の軽い脳は、思考能力が完全に失速。真美の姿を呆然と眺め続ける。
「やだぁ、なに見てるの?」
 ポッと顔を赤らめ、はにかむ身振りを見せた。
「・・・」
「ほら、荷物を早く積みなさいよ」
 爽やかなボディ・ソープの香りが、俺の思考能力に刺激を与えた。
「え、えっ?」
「早くしないと・・、時間が無いわ」
「そ、そうか。そうだね」
 残りの旅行ケースを荷台に積み終える。
「さあ、行けるかな?」
 オヤジさんが催促する。
「待って、お母さんが家の中に洗濯物を干してるの」
 しばらくして、どうにか出発できた。
 高崎駅東口のバス停に荷物を下ろすと、オヤジさんは駅の駐車場へ車を停めた。
 成田国際空港行き直行バスが、時間通りに到着。名前と旅行ケースの個数確認が終わると、バスに乗り込んだ。
《やっと、旅行の実感が湧いてきた。でもな、まだ信じられない。アメリカかぁ~、俺が行くなんて嘘みたいな話だ》
「何をソワソワしてるの? はい、ガムでも噛みなさい。落ち着くわよ」
「うん、ありがとう。それにしても、ポニーテールは似合うね。好きだな・・」
「本当に? 良かったわ。私ね、長い旅行のときは、いつもこれなの。手入れが簡単で済むから・・」
 ひじ掛けに置いた真美の手に、俺はそっと手を重ねる。真美が俺の思いに反応し、左肩に頭を寄せた。
 成田空港行きバスは、関越高速道路をスムーズに走る。


 


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