ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物が、世界大会に参加する。笑い、涙、ロマンス、親子の絆の物語。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。心意を確かめるために、行方不明の彼を探す。そして、ハワイ島へ。
 忘れ水 幾星霜  偶然の出会いが必然なのか、憧れは恋へ。恋は愛へ。山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。ひょんな出会いからの交流。そして・・。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズの第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 雨宿りに続く大河内晋介シリーズの第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 怪奇な夢を見続ける主人公。夢に現れる和服姿の美しい女性。それは不思議な縁から始まるものであった。
 ア・ブルー・ティアズ 入院中の父子が生死の別れ際に触れ合う姿。その様子見た主人公が、自らの父に対する情念を考える。また、夜間の救急病院で起きる生と死のドラマ。

   謂れ無き存在 ⅤⅩⅦ 

「ごめんね、大切な品物だったんだ」
 それにしても、俺の持ち物は少ない。持っているものはガラクタばかりだった。
「そんなに、がっかりしないで・・。これからは、ふたりで揃えればいいのよ」
「でも、真美の家には、新しく買う物が無いよ。殆ど揃っているから・・」
《古くても趣のある家具だと思う。もったいない気がする》
「いいえ、この家の家具は古いわ。模様替えを考えているの」
「真美の家だから、好きなようにすれば・・」
 何かを言うつもりなのか、俺の顔をじっと見つめる真美。
《俺が、機嫌を悪くさせたのか。特に変なことを、言った覚えはないけど・・》
 真美は動かない。しばらくして、真美の瞳から涙が零れ落ちた。
《どうして、泣くんだよ》
 俺は真美を引き寄せて、胸に抱いた。訳が分からず、慰めの言葉が出ない。
「ばか・・、洸輝のばか・・」
 胸の中で、囁くように俺を咎める。小さく壊れそうな、真美の体をきつく抱き締めた。
「新しい家は、洸輝と一緒に作るの。私ひとりじゃ、嫌! これからは、ふたりで夢や希望を育て、楽しい家庭を創るの」
「そうだね、俺が悪かった。寂しい生活は、俺も嫌だ。この先、真美を決して離さない」
「えっ、本当に?」
 真美は抱かれたまま、俺を見上げた。涙に濡れる小さな顔が、目の前にある。
《あ~、真美よ。運命によって結ばれた真美。この形の無い感情が、愛なんだろうなぁ》
「そうよ。私はあなたを愛しているわ」
「愛の感情を漸く理解できた。不思議な心の昂ぶりだ。真美、俺も愛しているよ」
 真美が唇を寄せる。俺も自然に唇を合わせた。
 初めは、優しく触れあっていたが、徐々に激しく重ね合った。そのまま、ふたりは寝室のベッドに倒れ込む。ふたりの感情は、欲望の渦に巻き込まれて行く。それは果てしなく続いた。
 絶頂の渦が通り過ぎ、ふたりは愛の感情に委ねる。
「洸輝、運命の人があなたで良かった。私の未来を預けることができたもの」
「俺だって同じだ。真美に会えたお陰で、自分の存在が意識できる」
 今までの俺は、自分に自信が持てなかった。この世に必要の無い人間と思い、存在価値を探そうとしなかった。
 今は、自分の過去を探し当て、真実の俺を確認できた。そして、今までは単に未来を模索する俺だったのが、夢と希望から新しい未来を築こうとしている。

×

非ログインユーザーとして返信する

あと 2000文字

※は必須項目です。