ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   謂れ無き存在 ⅤⅩⅦ 

「ごめんね、大切な品物だったんだ」
 それにしても、俺の持ち物は少ない。持っているものはガラクタばかりだった。
「そんなに、がっかりしないで・・。これからは、ふたりで揃えればいいのよ」
「でも、真美の家には、新しく買う物が無いよ。殆ど揃っているから・・」
《古くても趣のある家具だと思う。もったいない気がする》
「いいえ、この家の家具は古いわ。模様替えを考えているの」
「真美の家だから、好きなようにすれば・・」
 何かを言うつもりなのか、俺の顔をじっと見つめる真美。
《俺が、機嫌を悪くさせたのか。特に変なことを、言った覚えはないけど・・》
 真美は動かない。しばらくして、真美の瞳から涙が零れ落ちた。
《どうして、泣くんだよ》
 俺は真美を引き寄せて、胸に抱いた。訳が分からず、慰めの言葉が出ない。
「ばか・・、洸輝のばか・・」
 胸の中で、囁くように俺を咎める。小さく壊れそうな、真美の体をきつく抱き締めた。
「新しい家は、洸輝と一緒に作るの。私ひとりじゃ、嫌! これからは、ふたりで夢や希望を育て、楽しい家庭を創るの」
「そうだね、俺が悪かった。寂しい生活は、俺も嫌だ。この先、真美を決して離さない」
「えっ、本当に?」
 真美は抱かれたまま、俺を見上げた。涙に濡れる小さな顔が、目の前にある。
《あ~、真美よ。運命によって結ばれた真美。この形の無い感情が、愛なんだろうなぁ》
「そうよ。私はあなたを愛しているわ」
「愛の感情を漸く理解できた。不思議な心の昂ぶりだ。真美、俺も愛しているよ」
 真美が唇を寄せる。俺も自然に唇を合わせた。
 初めは、優しく触れあっていたが、徐々に激しく重ね合った。そのまま、ふたりは寝室のベッドに倒れ込む。ふたりの感情は、欲望の渦に巻き込まれて行く。それは果てしなく続いた。
 絶頂の渦が通り過ぎ、ふたりは愛の感情に委ねる。
「洸輝、運命の人があなたで良かった。私の未来を預けることができたもの」
「俺だって同じだ。真美に会えたお陰で、自分の存在が意識できる」
 今までの俺は、自分に自信が持てなかった。この世に必要の無い人間と思い、存在価値を探そうとしなかった。
 今は、自分の過去を探し当て、真実の俺を確認できた。そして、今までは単に未来を模索する俺だったのが、夢と希望から新しい未来を築こうとしている。

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