ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物が、世界大会に参加する。笑い、涙、ロマンス、親子の絆の物語。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。心意を確かめるために、行方不明の彼を探す。そして、ハワイ島へ。
 忘れ水 幾星霜  偶然の出会いが必然なのか、憧れは恋へ。恋は愛へ。山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。ひょんな出会いからの交流。そして・・。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズの第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 雨宿りに続く大河内晋介シリーズの第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 怪奇な夢を見続ける主人公。夢に現れる和服姿の美しい女性。それは不思議な縁から始まるものであった。
 ア・ブルー・ティアズ 入院中の父子が生死の別れ際に触れ合う姿。その様子見た主人公が、自らの父に対する情念を考える。また、夜間の救急病院で起きる生と死のドラマ。

   謂れ無き存在 ⅤⅩⅧ 

 十日後、旅行の手続きが整った。出発の前日、家族全員で荷物の整理。あれだ、これだと大騒ぎ。俺は厳しい寒さに耐える衣服を準備する。
「まあ、驚いたわ。そんなに防寒具を持って行くの?」
 明恵母さんが驚く。
「だって、この高崎よりもっと寒いって言うから、用意しておかないとね」
「大丈夫、少しオーバーに話しただけよ。だから、安心して・・洸輝。この時期は、とても紅葉が綺麗なの。お母さんも喜ぶと思うわ」
「じゃぁ、楽しみにしているわ」
 一段落したところで、夕食になった。食事しながら、旅行スケジュールを確認する。話を聞く俺は、次第に弱音を吐くようになった。
《オヤジさんと明恵母さんは、英語を話せるようだ。俺は全くダメだ。どうしよう・・》
 俺の心を察した真美が、軽い気持ちで助言する。
「何を弱気なことを言ってるの。大丈夫よ。分からないときは、単語を並べればいいの」
「そうだよ、洸輝君。私は、出来る限り話すつもりはない」
「でも、相手の話は理解できるでしょう?」
「いや、できない。明恵に頼むつもりだ」
「え~、嫌だわ。今回も私に頼るつもり・・、冗談は止めてよ! 海外へ旅行すると、いつもガイド兼通訳なの。とても大変なのよ、あなた」
 ひとり蚊帳の外で聞く真美が、笑い出した。
「ウフフ・・、アハハ・・」
「真美、何が可笑しいのさ」
「だって、私がいるじゃない。ガイドと通訳は、私に任せればいいの」
「そうだ。真美さんがいるんだ。心配する必要がない。そうだ、そうだ、良かった」
「そうよね、私も安心だわ」
 夕食の片づけを済ませ、くつろぎながら世間話に花が咲く。
「ところで、真美は日本語をどこで覚えたの。すごく達者なので、驚いているわ」
 明恵母さんの質問は、俺も前から聞きたいと思っていた。
「そうなんだよな。俺はいつも考えていた」
「ママは、家の中では日本語だけを話した。日本の漫画やビデオを取り寄せ、いつも観せてくれたわ。ママが亡くなってからも、日本語の勉強を続けていた。それに、同じ町に日本人家族が住んでいて、日本語を教えてくれたの」
 真美は日本に来てから、日本語検定の二級に合格する。俺は彼女の凄さに驚く。
「恐れ入った、真美は凄い勉強家なんだ。俺は恥ずかしいよ」

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