ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   謂れ無き存在 ⅤⅩⅤ  

「いえ、叶わないものを待ち望むより、真相を早く知れて良かった。だから、明恵母さんは自分を責めないでください。母さんの死を明らかにしてくれて、ありがたく思っていますから・・」
「そうかしら・・」
 明恵母さんは、済まなそうに顔を下に向ける。
「そうだね、洸輝君の言うとおりだ。いつまでも待ち続けるより、良いかもしれん。これで、明恵をこだわりなく母さんと呼べるだろう」
 オヤジさんが、隣に座る明恵母さんを労る。
「私も、洸輝の気持ちが、理解できたわ。やっぱり、洸輝は運命の人ね」
 真美が俺の頬に素早くキッスをした。
「おっ!」
「あら、まぁ~、真美ったら・・」
「わっはは・・、やはりアメリカ育ちだなぁ~、真美さんは」
 沈んだ空気を、真美が一気に吹き飛ばした。
「洸輝! 次はアメリカね! いいでしょう?」
「うん、そうだね」
「何が、アメリカなんだ?」
 真美がテーブルの上に体をのめらせ、自分の考えを告げる。
「私たち、ママの前で結婚するの」
「それで、いつ出発するの?」
「できるだけ早くよ。だって、ミシガンは寒いの。我慢できないくらい寒いわ」
「そんなに、寒いのか?」
「ええ、私が住んでいたバトル・クリークは、五大湖の近くよ。だから、カナダに近いの」
《うわ~、俺は寒いのが苦手だ。行くなら、早く済ませるか・・、来年の春以降にしたいなぁ》
「真美、来年の春以降に行こうよ。渡航の準備も必要だろう?」
 真美が俺の腕を抓る。
「い、痛い!」
「いいえ、来週よ」
「え~、来週に? パスポートが無いよ」
「じゃぁ、直ぐに申請しなければ・・」
 明恵母さんが興味を示す。そわそわと落ち着きなく、オヤジさんを誘う。
「そうね~、私たちも行きましょうか? ねえ、あなた・・」

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