ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   謂れ無き存在 ⅤⅩⅣ 

「・・・」
 真美は何も答えてくれなかった。
《真美よ、俺の心は変わらない。ごめんな・・》
「・・・」
 俺はしばらく待ったが、諦めることにした。
「オヤジさん、一本頂きます」
「うん、沢山あるから、何本でも食べていいよ・・」
 団子を食べながら、真美の様子を盗み見た。すると、怖々とみたらし団子に触れようとしているではないか。
「どうしたの、真美? 団子が嫌いなの?」
 明恵母さんも見ていたようだ。
「う~ん、初めて見る食べ物。これ、どんな味?」
「一口でいいから、食べてみなさい。好きになると思うわ」
 彼女は決心し、一口食べた。
「あら、本当だ。美味しい・・」
「でしょう?」
「ええ・・、癖になりそう」
 暫くの間、俺たち家族はみたらし団子に集中する。
 俺は手元のお茶を飲んでから、考えていたことを口にした。
「明恵母さん、新潟の海には行かない。お墓だけで十分だと思う」
「そう・・、それで気が済むなら、私は構わないわ」
 真美が反応した。
「えっ? どうして、行かないの?」
「母さんが生きていた、最後の場所かも知れない。でも、俺にとっては意味の無い場所だよ」
「なぜ、なぜ意味が無い場所と言えるの。洸輝、あなたのお母さんが・・。随分、冷たい考えね」
「いや、誤解しないでくれ。母さんを疎んじるつもりは決して無い。俺にとって、親子の縁を決別した場所と思える。だから、行くのが嫌なんだ」
 俺の言葉に、三人は黙って聞いていた。
「まして、母さんが生きていると今日まで信じていた。死に行く母さんの姿なんて、思い描きたくないよ」
「そうよね、私が悪いの。隠し続けるべきだった・・」

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