ウイルソン金井の創作小説

フィクション、ノンフィクション創作小説。主に短編。恋愛、オカルトなど

創作小説を紹介
 偽りの恋 愛を捨て、夢を選ぶが・・。
 謂れ無き存在 運命の人。出会いと確信。
 嫌われしもの 遥かな旅 99%の人間から嫌われる生き物。笑い、涙、ロマンス、親子の絆。
 漂泊の慕情 思いがけない別れの言葉。
 忘れ水 幾星霜  山野の忘れ水のように、密かに流れ着ける愛を求めて・・。
 青き残月(老少不定) ゆうあい教室の広汎性発達障害の浩ちゃん。 
 浸潤の香気 大河内晋介シリーズ第三弾。行きずりの女性。不思議な香りが漂う彼女は? 
 冥府の約束 大河内晋介シリーズ第二弾。日本海の砂浜で知り合った若き女性。初秋の一週間だけの命。
 雨宿り 大河内晋介シリーズ。夢に現れる和服姿の美しい女性。
 ア・ブルー・ティアズ(蒼き雫)夜間の救急病院、生と死のドラマ。

   謂れ無き存在 ⅣⅩⅧ 

「何が、知りたいの?」
「ええ、ん~、実は、母さんのお墓を知りたい。それに、母さんの最後の場所・・」
 心の奥にわだかまりを感じているせいか、俺はぎこちなく話す。
「お母さん! 私たちの結婚をお墓で報告したいの。それと、その命を絶った場所へ行き、彼の母親へのこだわりを整理させたいと思っているわ」
 真美はストレートに俺の気持ちを代弁する。聞きながら、彼女らしい説明のやり方だと感心した。
「そうね、良い時期かもしれない。きちんと弔い、あなたたちの未来を考えるべきね」
 真美の意見を、明恵母さんは直ぐに理解してくれた。
「ありがとう、お母さん・・」
 真美は礼を言った。俺は椅子から立ち上がり、黙ったまま頭を下げるしかなかった。
「そんな改まった礼など、必要ないわ。私の方が、謝ることよ」
 明恵母さんは、遠い記憶を呼び戻す。複雑な感情が絡み合い、適した言葉を探すのに苦労しているようだ。
「洸輝君・・。お母さんのお墓は、私たちのお墓の横よ」
「えっ? 明恵母さんたちの横に? どうして、ですか?」
 明恵母さんが経緯を話し始める。時折、辛そうに言葉を飲み込む。
「身投げしたから、身内の誰も受け入れてくれず・・。私は思い余って主人に相談したの。主人は悩んだ末に、実家の墓地内に小さなお墓を・・。だから、近くに・・」
 俺の心は、不自然に動揺する。この感情を、どう解釈すれば良いのか。
「お母さん、あなたの優しい気持ち理解できるわ。それに、お父さんが大好きになった」
《あ~、真美! 君はなんと素晴らしい感情を持っているんだ。確かに、君の言うとおりだ。明恵母さんにオヤジさん、このふたりは、俺にとって大事な人になった》
「あら、今ごろ気付いたの。これからは幸せな家族に、そうでしょう?」
 真美の誇らしげな顔、俺は頷くしかなかった。
「ああ、今になって気付いた。真美のお陰だよ」
「じゃあ、ご褒美は・・」
 怪しい暗黙の要求。俺の全身に電気が走り抜ける。
「後でね・・」
「楽しみにしているわ」
 俺は彼女の色香に撃ち落された。
 明恵母さんは一口の紅茶を飲むと、話を再開した。
「洸輝君のお母さんが、最後の場所として選んだのは・・」

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